第94話
二ヶ月後、宙と唯は二人で上京して同棲を始めた。
二人で物件探しに回って、いくつもある候補の中から二人とも同じ部屋を希望した。
「やっぱりここがいいよね、私たちの職場からはちょっと遠いけどその分安いし」
「そうだね、キッチンも広かったし唯も料理とかしたいでしょ」
「したいしたい、私の味が宙になじんでくれたらすごい嬉しい。お嫁さんに近づける気がする」
「あんまりかわいいこと言わないの。で、寝室は同じでいい?」
「一緒がいい。一緒に寝たいし傍にいてくれたらもしまた怖い夢見ちゃっても安心、うつだったときも宙との電話だとなんでか眠れたの。他の何聞いても眠れなかったのに宙が隣にいると眠れちゃうの」
「だーかーらーあんまりかわいいこと言わないの。俺仕事遅い日あるかもしれないけど起こしちゃわないか心配。その辺は?」
「私も入社したてだしきっと遅くなるよ、それにおうちで宙のこと待ってたい。起こされてもいいよ、でも寝てたらごめんね」
「唯さん何度俺に同じこと言わせる気? ……まああまりに遅くなりそうだったり飲み会あったりしたらすぐ連絡するから。むしろあんまり遅くまで起きてるより早く寝てくれてたら安心」
「わかった、遅くなりそうなら寝てるね、でも待ってたい日は待ってる。あと、その……職場に女の人って……いたりする? あ、やっぱり待って今のなし、めんどくさい女になっちゃう」
「俺としては妬いてくれるのも嬉しいんですけど? めんどくさいなんて今更思うわけないでしょうが、それならうつの時にとっくに思ってます。まあ俺に見捨てる選択肢なんてなかったけどね。さすがに三日連続で電話切られた時はちょっと心折れそうだったけど。まったく俺信用ないなあ、……でも残念ながら弁護士にもパラリーガルって言う補佐役の人にも女性はいます。ただ一切触れる気もなければ極力仕事以外の話をする気もありません。……これでも素敵な彼女がいるって新人の俺が職場で言いふらしてんだよ?」
「信用はしてるよ、宙のことは。でも相手の女の人はまた別じゃん。私の上司も男の人ばっかりだけど」
「確かに唯に愛されてる自信はあるけど男のことは信用してないから迎えに行かせて頂きます、酔って男に連れられてきた日にはさすがに怒るからな」
「そんなことしないよ、お酒もできるだけ控えるし、早く帰ってくるように頑張るし。……じゃなくてお部屋の話。ここでいいのね?」
「うん、オートロックで三階以上ならセキュリティも安心だしここに決めよう。唯を一人でいさせる時間が少しでもあるなら安心なところが一番だ」
そう言って二人だけの生活が始まった。
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