第93話

宙への答えを出したことを可奈に伝えた日、可奈から電話でずっと好きだったと告げられた。


友達だけでなはなく、恋愛対象としてずっとずっと好きだったと。


傍にいながら、あれだけ助けられていながらその想いに気づくことができなかった自分を責めたが、電話越しの大切な友人に「ごめんなさい」なんて言葉は似合わなかった。


「ありがとう。楽しい時も辛い時も、ずっとこれまで傍にいてくれてありがとう。私にとって可奈はずっと大切にしたい、可奈の言葉を借りればおばあちゃんになるまでずっと一緒にいたい大切な大切な人だよ。私の生きる意味になってくれる、私の唯一だよ」


泣きじゃくる可奈にありがとうと伝え続けた。


そして可奈は言った。


「まだ、しばらくは唯のことが好きなままだと思う。そのままでいても、いいですか? これまでの人生で、私の中の一番大切できれいな想いなの。きっといつか心から宙と唯を祝福して、何よりきれいだった思い出になる。絶対なる。それくらい唯のこと愛してたし今も愛してる。唯が生きててくれて、宙が唯を大切にしてくれて本当に良かった。おめでとう、これからもずっと一緒にいてね。宙と、私と、一緒に幸せになろうね」


「そのままでいてももちろんいい。その気持ちを抱えたままでも祝ってくれてありがとう。私は恋愛として可奈の気持ちに応えることはできなかったけど、それでも可奈のことが大好きなのは変わらない。ありがとう、可奈。一緒に幸せになろうね」


そこでやっと可奈は初めて報われた。誰にも告げることなく終わろうとしていた恋が何より大切な思い出になろうとしていた。

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