病めるときも、ーーそして。
第90話
ーー三年後。
唯は宙とのメッセージや電話を交わし続けているにもかかわらず、”まだ”の答えを出さないままでいた。
体調のせいで単位を落としてしまうことも多く、唯は二年遅れで大学を卒業して福利厚生のきちんとした大手商社の総合職に一般採用で採用された。
三年間をかけてうつ病はなんとか寛解した。それまで宙と可奈はどんなに唯が大丈夫と言い続けてもずっと支え続けてくれた。
障害者雇用でなく一般雇用で正社員として内定をもらえたことが唯に自信を付けさせた。家族も自分の希望していた会社に採用されたというととても喜んだ。
私にだって一人で立つ力がついたんだと思うと唯も嬉しかった。
高校と大学を留年した理由も持病のためと伝えたものの、病名を訊かれることはなく面接は終了した。
自分の魅せ方を誰よりも研究してきたと自負する唯にとって面接は最高の試験方法であり、実際のところ唯は簡単に試験をパスしたに近い。サークルでの活発な活動とその中での成果も唯の就活を手伝った。
宙はと言えば、大学院在学中に合格率四パーセントと言われる司法試験予備試験の狭き門を突破し、その年のうちに司法試験にも合格、一年の司法修習を終えて大手五大事務所と呼ばれるうちの一つの弁護士事務所でキャリアを積み始めていた。
宙と可奈も唯が目指していた企業に内定したことを告げると自分のことのように喜んでくれた。
可奈も大学四年生のうちに出版社の内定を勝ち取り、無事に卒論を書き終えて就職を果たした。
三人全員が目指していた道を歩き始めていた。
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