第84話

「可奈あ、私甘えすぎて駄目人間になっちゃうよ」


「ならないならない、私としてはあんだけ強そうだった唯が弱いとこ見せてくれんのがいっそ嬉しいくらいなんだから。……あとさ、あのゴミだけどうにかしない? 過ごしにくいでしょ普通に。燃えるゴミの日ここいつ?」


「明日の朝八時まで。でもいつも明け方から寝てるから出せなくて溜まってる……今考えてみたらこんな部屋に人あげてるの恥ずかしい……」


「じゃあ私帰るときに放り込んでくるわ。アパートの横にあるのでしょゴミ捨て場」


「え、でも夜のうちに入れるの駄目なんじゃ……」


「そんなこと全員守ってるわけないでしょ。大体私来たときもうゴミ捨ててあったし。これまで偉かったんだから多少のルールなんて破りな」


「そういうもんなの? 管理人さんに怒られない?」


「私なんか入居したときから夜にゴミ捨ててるけど怒られるどころか注意書き一枚も見たことないね。そんなもんよ」


「それ誇らしげに言うことじゃないんじゃ……じゃあせめて私が行く」


「私の知ってる唯はその格好で外に出られるタイプじゃないんだけど? 着替えられる元気あんの?」


唯はしばらく考えた後諦めた。


「すいません、甘えさせていただきます……」


可奈はその後も唯の悩みを聞いたりたわいもない話をしたりしてたっぷり三時間過ごした後空のタッパーとゴミ袋を持って部屋を出た。


「じゃあまた水曜。でもなんかあったら電話しな、もうほぼ単位取れたようなもんだから授業なんていくらでも切って来るから」


「ありがとう、じゃあまたね、可奈と過ごしてると全然辛くなかった。甘えてごめんね」


「ごめんは要らん、私が勝手に世話焼きたいだけなの。でも辛くなかったなら何より」


部屋の玄関で可奈を見送った後、唯の心はいつもよりずっと穏やかだった。

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