第83話
六時を過ぎた頃、シチューを食べながら二人で話した。
「うちの大学の学生支援センターにカウンセリングやってるとこあるって。それならタダ。あとこっちはお金かかるけど調べたら訪問看護って言って看護師さんが家に来てくれるのもあるっぽいよ。唯が無理そうなら私から連絡するけどどうする?」
「私可奈にすごい愛されてる……シチューおいしい……うれしい泣きそう……でもこれ以上外の人と話すの無理そう……」
「愛してるに決まってんでしょ、宙は大好きな大好きな唯ちゃんの家にも上がれなければ抱きしめることもできないんだから私に独り占めされときな。で、外の人と話すのはこれ以上はきついのね、分かった。またもしやりたくなったら言って。いくらでも探すし連絡通す。ご両親頼るのは?」
「実は復学前三ヶ月くらい実家に帰ってたんだけどこっちに戻ってきてからは親にももうずっと元気って言ってて、今更なかなかまだ調子悪いって言い出せなくて……それに私高校生の頃からずっと両親にもあんまり素を見せてないの。家に帰った時は多少甘えられたけど、素を見せるのにも二人に言ったのと同じくらい勇気が要る。あと病気なら家に帰ってこいってまた言われるのも怖い」
「家帰るのも一つの手だと思うけどこじらせてるねえ、まあそれが唯の希望なら無理にとは言わないよ。じゃあそれまで私がカウンセリングしてやろう。……おぬしの悩みは何だ?」
「なんか占いの館みたいなんだけど。……そうだなあ、やっぱり寝れないのと夢が怖いのが辛い」
「夢ってどんなの?」
「なんて言ったらいいかな、ホラゲーみたいな? 誰かが追いかけてくるのから必死に逃げたり、隠れてるはずがその人と目が合って飛び起きたり」
「こっわ! あんたよくそんなのに耐えてるね、ほんと生きてて偉いわ。いい子いい子。私の家来る? 来客用ベッドあるけど」
「さすがにそこまでは甘えない、自分の家がトラウマになったらやだし」
「あー確かにそれも一理あるね、ここでいい夢見て寝れるようになるのが一番か。でも怖かったら真夜中でも電話してきな。電話越しでも傍にはいられるから」
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