ずっと傍にいる。

第82話

唯が可奈に自分のことを告げた次の日の午後五時、可奈から電話がかかってきた。


「もしもし、急に悪いんだけどさ、唯、病院に行くのって何曜日?」


「どうしたのそんなこといきなり聞いてきて。今日行ってきたところだよ、毎週金曜日の三時から」


「おっけい、分かった。じゃあね」


「え、待って待って何がしたかったの? ……切れた」



何だったんだろ、と思いながらもう一度電話をかけるかスマホとにらめっこしていると、インターホンが鳴った。


「唯、昨日に続けて悪いけど来ちゃった。……入れて?」


とりあえず玄関に通す。しばらくすると部屋のインターホンが鳴らされた。


「すいません、今日の夕ご飯ちょっと作り過ぎちゃって……これもらってくれませんか?」


「可奈それ隣の人がやるやつ、自分の家から十五分の人がやるやつじゃない」


「だってこれ人生で一回はやってみたかったんだもん。とりあえずほんとにご飯あるから一緒に食べよ? どうせ何も食べてないでしょ、昨日抱きしめたときガリガリだったもん。さあ吐け。今日一日夕方五時までに何を食べたか吐け」


「それは……えっと……チョコレート二つ?」


「はいアウトー私とのご飯決定」


そう言うと可奈は持っていた大きなバッグから次々とタッパーを出してきた。


「今日のご飯はシチューでーすレンジ借りまーす」


「えまって、他にもすごいあるけどこれは何?」


可奈はレンジにシチューを入れて温めながら答えた。


「これ三個がおかゆでしょ、こっちは我が家直伝の風邪引いたとき鉄板のおじやでしょ、これはスープ。こっちはちょっと元気な日用の生姜焼き。あとそのまま食べれるパンね。元気あったら温めるとよりおいしい。あとプラスチックのスプーンと割り箸。一食分ずつ分けてあるからレンジで適当に温めて食べて。私今水曜と金曜全休だからその時また取りに来る。タッパーは洗わなくていい」


「さすがにこんなの申し訳なさ過ぎる、受け取れないよ」


「これ重かったんだからね? うちまで持って帰るのもう嫌です、はい冷蔵庫オープン。ねえちょっとほんとにチョコとお茶しかないじゃん、これまでどうやって生きてきたのあんた」


「チョコ食べて生きてきた。拒否権なし?」


「なし。大体病院の先生になんて言われてる?」


「生活リズム良く三食食べて薬飲んでよく休めって言われてます……」


「でしょ。次の水曜に来たとき残ってたらちょっと怒るからね。はいシチューできあがり。二人分分けるの面倒だからこっからつついて食べよ、食べられる分だけでいいから」


「私そんなに可奈に甘えられない、やっぱり駄目」


「いーい? これは私がやりたくて勝手にやってんの。心配くらいさせてよ大事なんだから」


「でも可奈の負担が……「今のあんたの方が負担大きいに決まってるでしょ、私も授業と就活と卒論でぎゅうぎゅうにされたらやってらんないのよ。ちょっとの楽しみがほしくてやってるんだから素直に甘えて。異論は認めない。ほらこのシチューの匂いにつられろー」


「……おなかすいた」


「よし」

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