第79話
宙が唯と会った日の次の日、午後一時を過ぎた頃唯から電話がかかってきた。
久しぶりに唯と話せる。それが素直に嬉しかった。
でもその次の一瞬に思い当たった。
ーーその話がもし宙の話だったら。私は唯の話を最後まで笑って聞けるだろうか。心からの、応援の言葉を、お祝いの言葉を言えるだろうか。
もしも唯が宙を好きだと言ったら、それを受け止められるだろうか。
それが少し、本当は少しなんてものじゃないくらい怖かった。電話が何コールも鳴って、このままでは切られてしまうと思ってなんとか電話をつないだ。
自分の声が震えていないか心配だった。
「もしもし? 唯がかけてきてくれるなんて珍しいね、どしたの? もしかして唯もついに悪い男に捕まった?」
努めて明るい声を出した。大丈夫、いつも通りの声だ。
そうだ、復学おめでとうって言わなきゃ。まずはおめでとうを伝えなきゃ。
その声が出る前に唯はいきなり謝りだした。
「どうしたの? 私何もされてないよ、大丈夫だよ、ねえ唯? 何かあったの?」
その時にはもう宙とのことなんて忘れていた。ただ、明るく朗らかだったはずの唯が泣いているのを初めて聞いて心配でいっぱいになった。
何があったんだろう。私は何をされていたんだろう。唯は言葉を詰まらせながら、泣いてしゃくり上げながら話し始めた。
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