第73話

告白してきた男子バスケ部の男子は友達として元々多少交流があった。


私にもきっと幸せな恋愛ができるんだ。そう思って可奈はその告白を受け入れた。唯もそれを聞いて喜んでくれた。

唯が喜んでくれたことに少し心が曇った気がしたのはきっと気のせいだろう。


しかし可奈の淡い気持ちは一ヶ月と経たないうちに砕かれた。


可奈に告白してきた男子は、要するに”女子なら誰でも良かった”のである。


友達との遊びを優先されて元々会うはずだった日の予定をキャンセルされることも、夜遅くに会おうと誘われることも、交際それ自体が初めてだった可奈には普通のことのように思われた。


そしてそれを止めたのが唯だった。


そんな時間に帰らせるのおかしいよ。私なら大事な可奈のこと深夜に放り出したりしない。だって私がその時間に一人で出歩いてるって知ったらどう思う?

もちろんそんなことは許せなかった。ほら、やっぱり良くないって思うでしょ? 

唯の言うことは全くその通りだった。


唯が自分のことを見て、話を聞いて心配してくれると思うと嬉しかった。対して自分のことを全く心配していないであろう提案をしてきた彼氏への評価は地に落ちた。

自分の彼氏は自分のことを好きなわけじゃない、ただ都合のいい存在としてみているだけだ。そう気づいてしまったら彼氏のことなんてどうでも良くなってしまった。


冷めてしまった人と、そして相手も自分のことを考えていないのならなおさら、だらだらと関係を続けるのも失礼だ。そう思っていた可奈は結局その彼氏とは早々にお別れすることになった。まあ初めての彼氏だったし、こういうこともきっとあるよね。そんな風に考えていた。

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