第72話
そして、二度目の恋をしたのが大学一年生の春だった。
入学したてで何も分からない中先輩を含めて履修登録に付き合ってもらい、そのためにほとんど同じ授業を取っていた唯と親しくなるのは早かった。いつも親しみやすく朗らかで誰に対しても優しい。それでいてさっぱりしたようなところもある。
ーー先輩みたいだ。
そう思ったのが最初だった。
「今日の講義全然わかんなかった、教授が日本語話してなかった」
なんて愚痴をこぼした日には夕方まで講義の内容を説明してくれた。唯は頭も良かった。唯がかみ砕いて教えてくれる講義の内容はさっき聞いたはずのものなのに全く違うように聞こえた。これってこんなに面白い講義だったんだ、さっき聞いたときはつまらなかったのに今聞いてるとどんどん勉強したくなってくる。あんなに小難しいこと言ってたのに。もしかしたら唯の方が教授より頭がいいんじゃないか、とすら思った。
いつでも話を聞いてくれて、大抵のことは怒らず軽く流してくれて、分からない講義がある度に甘えてしまっていても唯は快く許してくれた。
講義の内容に至ってはいつでも、何回でも同じことを説明してくれた。
そんな唯の優しさに少しずつ惹かれていった。
しかし高校時代の失恋はまだ記憶に新しい。ずっと女子に囲まれて育ってきた可奈には、唯に対する気持ちが友達としての好意なのか恋愛感情なのかも分からなかった。
本当なら私は男の子に惹かれるはずだ。まだその相手が見つかっていないだけで、唯のことは一人の人間として、友達として好きなだけなんじゃないか。
そう思っているときに同じ部活の男子に告白された。
私にも幸せな恋愛ができるかもしれない。初恋だと思っていたあの出来事は実は間違いで、私が本当に人を好きになるのはこれからなのかもしれない。映画で見ていたような運命の恋ができるんだ。
そう思った。
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