第43話
その日のレポートを書くに当たって宙が発達障害について調べていると、
「俺は精神障害者手帳二級を持っているんだ。障害者に逆らうな、侮辱罪で訴えるぞ」
といった趣旨のブログを見かけた。障害をこうして盾にする人がいるなど考えたこともなかった。
もちろん障害を持つ人全員が善人であるわけもない。分かっていたはずが突きつけられて改めて思い知らされた。
よくよく考えてみれば発達障害なんて生まれたときからのものなのだから、中には根っからの悪人だっていて当然だし、人を傷つける方向に病気が向かう人だっているだろう。
でもその中にいたはずの善人の中にもきっと障害を盾にしている人はいる。
彼らは最初からそれを盾にしていたんだろうか。自分を守るために彼らが盾を持たなければ生きていけないような出来事があったんじゃないのか、
そう、たとえば今日の講義で聞いた差別のような出来事が。
盾を持つ人をなお攻撃し続ける人がいる。だからこそ寿命が短い、精神疾患にかかりやすい、なんていう事実も出てくるんだろう。
ただでさえ”普通の人”の社会の中で自分の特性と上手く付き合っていくことだって難しいのは海のことを思い出せば想像に難くない。
もしその差別が障害を持つ人に等しく降りかかるとすれば、”盾”を持たない人にもその矢は降りかかってくる。
だとすればこの差別社会は彼らにとっては障害以外の何ものでもないだろう。
障害を持つのは人か、それとも社会か。
唯なら障害者差別についてどう言うだろうか。どう思い、やはり同じように怒るのだろうか。
きっと彼女なら自分のことのように考えて怒るだろうな、などと思いながら、唯がその当事者であることなどつゆ知らず、宙はまだ白紙のページにレポートを打ち込んでいった。
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