第39話

結局外で二人きりで会うことはないまま二年生の春学期を迎えた。


心なしか彼女が前より更に華奢になったような、一瞬言葉に詰まることが増えたような、そんな気がしていた。


でもそれには自分以外誰も気づいていなかった。


「なあ、なんか唯さん最近なんか変わった気がするんだけど俺の気のせい?」


「唯さん?いつも通りじゃね?何なら今さっきテストの対策付き合ってもらったし。やっぱあの子頭いいよな、これで次の小テスト合格はほぼ確実だわ」


他の誰も気づかない違和感に、気のせいか、女子はきっとダイエットだってするだろうし、いつだって軽く話をする気分な訳でもないだろうし、と言葉にするのをやめた。


今思えばその時に声をかけるべきだったのだ。


ただでさえ学部の専門科目が増えていく二年生では唯との接点は少なくなっていく。


その頃世間では新型のウイルスがはやり始め、授業もリモートが増えていく中でキャンパス内での関わりは更に制限された。


宙がどんなに唯と同じ授業を取ろうとしても専門科目と必修科目が邪魔をして限界がある。


そもそも宙は学部を三年で卒業して大学院に入るコースに入っていた。


卒業単位を一年短く取り切ることを考えれば唯との接点をいくら作ろうとしてもせいぜい心理学をとることが限界だった。


気にかけていたつもりで、結局声をかけないまま夏休みに入った。


その、宙以外、唯本人ですら気づいていなかった違和感は秋になって的中した。

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