出逢い
第38話
宙が初めて唯を見たのは、入学式の日のことだった。
ーー綺麗だ。
まっすぐピンと伸びた姿勢に、明るく笑う顔に、殆ど一目惚れしたようなものだった。
入学式後早くもできた友人らしい女子達と大学のキャンパスを周りに行った唯を遠巻きに見て、あの子に話しかけたいと思った。
そして、その機会は意外にも早く来るものだった。
授業が始まって一週間目、教養科目の講義室で前列に座ろうとしているあの子を見つけた。
一緒にいた友人達に「大学に来て早速女かー?」
「でもあの子結構かわいくね? 俺も前行きたいんだけど」
「いやおまえ始まってすぐ寝るだろ、前列なんて諦めろ、この講義の教授厳しいらしいから初回から出禁になるぞ」なんて軽口を叩きながら黒板の良く見える前の席に列を変えて声をかけた。
「隣、座ってもいい?」
どうぞと答えた声は優しく、清楚な雰囲気に華奢な肩で隣に座ってみれば背も一回り違うようだった。
話しかければぽんぽんと話は進み、そのノリの良さにも好感を持った。
講義中は教授の話を聞いている体で彼女のことをチラチラと見ていたが、唯と名乗った彼女は熱心に講義を聞いているようでこちらには全く気づかなかった。
横顔も綺麗だな、なんて思っているうちにその日の講義は終わっていた。
講義が終わって次の講義のために移動しようとする唯を引き留め、授業で分からないことがあったら、と言い訳を付けて連絡先を交換した。
メッセージを気軽に送り合うようになり、とりあえず今のところ恋人はいないようだと安心する。
だが彼女を狙い食事や外出に誘った友人や知人が次々と玉砕していくのを見て、そしてその全員が食事すらOKしてもらえなかったと言っているのを聞いて、おそらく唯が恋人をほしがっていないだろうことに少し残念さを覚えた。
それならば唯に今告白したところで勝機はないだろう。玉砕した友人には悪いが唯を誘っても無駄だということは学ばせてもらった。
まずは一番の男友達になるところからか、と宙は唯との関係を長期戦に持ち込むことにシフトした。
実際趣味はこれまでのどの友人よりもぴったりと合っており、勉強の面でも支え合ってお互いに最高評価の成績を叩きだした。
唯が目を合わせて話してくれることも、自分のことを見てくれていると思って嬉しかった。素の自分でいても唯とは気楽に居られた。
唯に対する宙の評価は恋愛対象としても、そして頼れる友人としても上がっていった。
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