第34話
中学二年に上がっても、三年に上がっても、高校に合格して高校生になっても、両親の目が自分に向くことはなかった。
逆にどんどんと現れていくADHDの症状に対応するのに手一杯で宙の話を聞くことも少なくなっていった。
海は両親や学校の先生、専門の医師のサポートを受けながらなんとか日常生活を送り、なんとか勉強についていった。
その頃も宙は海の様子を見続けたし、宿題も海が分からないと言えば根気強く何度でも説明した。
小学校の頃から成績が良かった宙にとっては海が何を分からないと言っているのかが理解できず、一つ一つ海の理解が追いついているかどうか確認しながら説明を続けた。
自分の勉強の時間を割いてでも海を助けたかった。
それでも、いくら自分が海を助けてその上自分のことを一人でやりきっても、両親の目は海を見ていた。
宙はいつからか両親に自分を見てもらうことを諦めた。
いつからか、その日学校であったことを家では話さないようになっていった。話すことと言えば海のことだけだった。両親も海の様子のことなら何でも聞いてくれた。
外に行けば、学校にいれば友達がいる。友達なら自分の話を聞いてくれる。それで十分だ、と言い聞かせながら高校三年生になった。
その頃の宙には、もう我慢することが、相手のことだけを考えることが染みついていた。
自分のことよりも海のことを考えて過ごし、自分のことを考えるのは学校にいるときだけになった。
高校三年生になる頃、宙は志望校を実家から通える国公立の大学に決めた。
難関大学だったが、家で海のことを見ていなければいけないことや、下にまだどんな支援が必要か分からない弟がいることを考えれば宙にとっては当然の判断だった。
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