第26話

比較的仲のいい友人からは頻繁にメッセージが届くようになり、可奈や宙ともそうして話すようになった。


メッセージくらいのものであれば創りあげた自分を使うことはそう難しくない。


二人とはいつも通りたわいもない話や映画の感想を送り合っていた。二人は一度休学することを伝えただけで何も訊いてこなかった。


「あの映画見た?」


「あーあれまだ見てない、どう? いい映画だった?」


「途中やたら小難しい話が入ったけどラストがよかった」


「じゃあ見るかあ、また見たら感想送るね」


この二人と話してるのはやっぱり気楽だな、余計なこと話さなくて済むし。可奈は無意識に、宙はおそらく意識的に、唯が話したくないことは聞いてこなかった。


休学すると聞いてしつこく理由を訊いて来る友人も多かったが、全てはぐらかした。


「まだ何してるかは秘密でーす、誰にも教えません。残念ながら期待してるほどのことじゃないと思うけどね笑」


「でもよくよく考えたら皆から過去問もらえるのラッキーだし一個下の同級生ができたらまた友達増えるし最高じゃない? 私今よりもっと成績よくなっちゃったらどうしよう」



いつもの唯が言うだろう言葉を探しては返信した。


だが元気がないのを隠そうとしたためかメッセージは後から見てみればいつもの二割増し調子に乗ったようなものだった。


まあいっか、だれももう突っ込んで聞いてこなくなったし。復学したときにまた適当な理由考えよ。


ただこのときいっそのこと留学したとか起業したとか適当なことを言っておけばよかったと後に思うことになる。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る