第19話
また本の趣味も合うようで、「これ唯さん絶対好き」と貸してもらった本には夢中になって自分の生活のルーティンを崩してまで読破した。
「やばかった、どうしようこれまでで一番かも」と唯が言うと宙も嬉しそうに「だよね、これが俺も一番」と語り合うのが昼休みのお決まりになっていた。
宙は唯が好きな本を貸す度「唯さんやっぱりセンス最高、付き合い短いのにもう俺の好みも完璧に把握されてる」と必ず褒めてくれた。
「今回は三冊そろえました。感動系、恋愛系、純文学悲しめ系。唯さん今日はどれになさいます?」
「えー待って、実はこの本先週本屋さんで見かけてちょっと気になってたんだよね。他の本買っちゃたけど。えでもこれもこっちも気になる、ちょっと開いていい?」
「どうぞお好きに」
「まってまってこれ一文目すごい導入だよね、どうしよう全部気になってきた」
「じゃあもういっそ全部持ってけ笑 どうせ唯さん読むの早いし俺も借りてる本まだかかりそうだし」
「ありがたく! 借りさせて頂きます!」
「そういえば借りてる本今すごいことになってる、まだ途中なのにすごい泣ける」
「でしょ、あの本で私の涙は涸れました」
「前もそんなこと言ってなかった?」
「前も涸れたし今回も涸れたの、しょうがないじゃんその日の水分全部もってかれたんだもん」
「言いたいことは分かるけど一生のお願い何回もしてるみたい」
「あ、ばれた? お母さんには三回してる。小さい頃まだ公園で遊んでたかったときと本買ってほしかったときと受験で県外に出るって決めたとき」
「地元千葉だっけ? そりゃ一人娘家から出すとなったら心配されるし使い時だよなあ」
なんて言って借りてきた本たちは結局夜通しで三冊読み切ったしどれもどタイプの本だった。宙の選ぶ本なら間違いないと思ってこれまで読まなかったジャンルにも手を出すようになっていた。
趣味がここまでぴったり合う友人は初めてで、唯は本屋に行くたびこれ宙も好きそうだな、なんて考えるようになっていた。
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