第17話
一年も秋学期を過ぎればもう夜中に可奈から電話がかかってくるときは大抵彼氏のことなのも決まってきていた。
「もしもし可奈? 今度はどうしたの? 浮気? 夜中の誘い? あと彼氏とのトラブルって言ったら何がある?」
「うわあ私唯からの信用ない……でもすいません、今日もお話聞いて頂けませんか……」
よろしい、といって聞き始めてみれば今度は愛が重いばかりに束縛されて男の連絡先を全部消せ、何なら女の連絡先も全部消せと言われているらしい。
位置情報の共有アプリも俺のことが好きなら入れて当然だって言われたんだけどさすがになんか抵抗があって、と言う可奈にそれ以上首を突っ込む前に相談してくれただけで十分、と返した。連絡先を一度消してしまえば友達からの信用ですら多少は失ってしまう。女子からならまだ多少は同情されるだろうが男子がどうなのかはさすがに唯でもわからない。
確かにある程度の嫉妬なら彼氏彼女の関係が始まって浅いうちは理解できる。自分だってたとえば彼氏ができたとして、その彼氏が別の女子と二人でお酒の入るような席に行くと聞いたら絶対嫌だろう。もちろん昔から彼氏を作る気もないしまだ二十歳にもなっていないのだからあくまで仮定の話だが。
でもどう聞いてみても可奈はその重い愛に応えられる程彼氏を愛しているようには聞こえなかった。
可奈は友達になら恵まれていたし、逆に可奈の良さを分かっている男子は友達として可奈と長く付き合っていたいようだった。
そんな友人に囲まれて楽しそうにしている可奈のことなど微塵も考えずに自分の安心のためだけに連絡先を全部消せと言ってくるなど、いつも隣にいる唯からしてみれば言語道断だった。
可奈のことを全然見ていないから、全然知らないからそんなことが言えるのだ。唯は相談に乗る度その碌でもない相手が可奈の隣にいることに本気で怒っていた。毎回飽きずに碌でもない彼氏を連れてくる親友がかわいそうで、なんなら自分で告白してきた男どもを見定めてやりたいくらいに腹立たしかった。なかなか別れられないと聞いた日には相手との間に仲介役として入って別れを手伝うことも何度かあった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます