第12話

唯は就職のことを考えて留学生を支援するサークルと学生だけで運営するカフェのサークルに入った。


基本的に参加は時間のあるときに自由にでき、忙しいときには休みやすいサークルでもあったことから選んだサークルだった。


ガクチカ、つまり”学生の時に力を入れていたこと”なんてことを就活で話すことを考えればこれで十分だろう。



入ってみれば実際学びになることもとても多かった。


留学生を支援するサークルでは留学生の受け入れ、言語面でのサポート、日本人学生と打ちとけるためのイベントを定期的に開催していた。

唯はフランス語を専攻していたため英語圏とフランス語圏の学生の対応をすることが多かった。

生の英語とフランス語を聞ける機会は非常に貴重で、必要な日本語を伝える過程で唯の英語とフランス語もぐんぐんと上達していった。


英語は元々得意な方だったので更に会話に磨きがかかった。


楽しい、自分が人の手伝いをしていく過程で自分もどんどん成長していける。


その実感に結果は当然のように伴い、その年唯はTOEICで八百六十点をたたき出した。TOEICなんて就活に使うのにはとりあえず七百点台を目指すのが目標とされている。


受験生の時の知識が衰えていないことも大きかったが、唯の英語の力はそれを遙かに超えていた。


どうせなら、と受けたフランス語検定にも合格した。

どんどんと増えていく自分の称号にも嬉しさを覚えた。



イベントの運営も勉強になることが多くあった。


イベントを開催するにあたってまずはどの言語圏の人にでもわかりやすいようにできるだけ平易な日本語でイベントの情報を書き込んでいく。自分のわかる範囲で英語とフランス語の字幕もつけた。他の言語を専攻している先輩から多少韓国語や中国語の勉強も教わった。


いつも当たり前のように使っている日本語が伝わらないことも何度か経験し、その中で誰にでも伝わりやすい日本語を学んでいった。


誰にでも伝わりやすい日本語を使うことは、難しい単語をポンポンと使ってしまう唯にとっては多少難しかったがいい勉強になった。


その後も実際に使う会場の予約、設備の設営、参加人数の確認など様々な部門に積極的に何にでも参加した。


自分が力を入れて三ヶ月近くをかけて初期段階の計画から準備したイベントが実際にうまく進んだときは達成感を覚えた。


留学生の中に友人が増えるのも嬉しかった。

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