第11話
次の週には大学の講義も本格的に始まったが、予習と復習を欠かさない唯にとっては学部一年生の授業はほとんど楽勝に近かった。グループディスカッションでも相手の話を最後まで聞いてきちんと受け止めた上で的確な返しをする唯に、小テストの前には高校時代のように同じ講義を取っている学生が集まった。
ほとんどの友人は分からない箇所を聞いてくるだけだったが、中にはそうでない人も多少いた。
講義ノートのコピーを売ってくれ、なんてお願いはかわいいもので、テストの対策がしたいから休日にカフェで会ってくれ、などという下心が見え透いた学生もそれなりにいた。
女子からのお願いには快くOKしたが、男子からの外出込みのお願いは全て断った。
もちろん唯にその男子達と付き合う気などない。恋愛はしないと決めているのだから、その気にさせてしまうのが嫌だった。
唯は高校時代から積み上げてきた経験から自分に向けられる好意にも敵意にも敏感だった。
そのため自分に好意を向けていると分かった男子は、
「この範囲は私よりできてると思うから心配いらないよ、さっきだってすごく的確なこと言ってたし。きっと教授もあれ見て評価してくれると思うな、この講義ディスカッション結構重視されるって聞くし。どうしてもわからなかったら講義の後すぐなら空いてるからその時に聞いてくれる?」と早晩営業スマイルでかわされることとなった。
多めに褒めておけばそれに浮かれていてくれる、なんてそろばんを弾いている自分のことは少し気に入らなかったが、それが創ってきた唯なのだから仕方なかった。
それでも踏み込んで誘おうとした男子には「ごめんね、私もちょっとこの先しばらくバイトとサークルで忙しいから悪いんだけどほかの子に頼んでもらえる?」と事実上のお断りをして自分からは連絡をしなくなった。それでも更に連絡してくる男子は残念ながら未読スルーされることになる。
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