第6話

高校は夏休みから休学することに決め、秋からは家と病院を往復する生活が始まった。


そしてその通院生活の中で受けた問診とIQ検査によって、唯はASDーーいわゆる自閉症という発達障害であることが診断された。


「唯さんは自閉症の中でも言語や知能の遅れがない、今では使わない言葉なのですが昔で言う高機能自閉症、アスペルガー症候群といっていいでしょう」


「……そうですか、こちらでもできる限りは調べさせていただくのでこの子の支援をよろしくお願いします」


「こちらでできる限りの対応はしていきますが、基本的には適応障害の対処療法になると思います」


「そうですか。分かりました。ありがとうございます」


後半の言葉はもう唯の耳に入っていなかった。


唯は頭をガツンと殴られたような気持ちになった。自閉症。自分には全く縁のないものだと思っていた。


だって私勉強は得意だし、ひまわり学級に入ったこともなかったし、中学生の時は失敗しちゃったけど今はちゃんと友達もいる。

ちょっと疲れるけどそれくらいいじめられるのに比べたらなんてことない。


自閉症って、もっと勉強や話すことが苦手な子のことじゃないの?


唯はその日大きくショックを受け、


ーーそして調べ尽くした。


 こだわりの強さ。コミュニケーションの苦手さ。共感の苦手さ、建前と本音の区別の苦手さ。ある特定の物事には強く関心を持ちその集中力は一般人を超えるために成績はいいことも多い。生活がルーティンワークになりやすい。急な予定の変更に弱い。目線を合わせるのが苦手なことも多い。難しい言葉を使いがち。自分の中の理論として納得できないことは一般的な常識であっても受け入れにくい傾向にある。



ーーぴったりだ。私が目線合わせられなかったのも、あの子達と一緒に笑えなかったのも、これのせいだったんだ。


皆の話が面白くなかったのも、全部私の脳のせいだったんだ。


それは唯が生まれて初めて受け取った唯の取扱説明書だった。

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