第4話
生活の中に小さな違和感を抱えながらもそのまま唯は中学生になった。
知らないことを知る喜びは中学に上がっても健在で、成績は上位をキープし続けた。テストの結果がもらえる時に自分の名前が上位に載っていることが誇らしかった。
だが中学生ともなると人付き合いも難しさを増す。
中学二年のある日、それまで唯と仲のよかった莉々亜のグループが同じく仲のよかった春佳の悪口を言っていた。
「あの子っていつもわがままだよねー、前なんて私のお母さんが出してくれた皆分のおやつ全部ひとりじめしたんだよ、ありえなくない? もう家に誘うのやめよっかな、あんな子と一緒にいたくないし」
唯は何の気なしに春佳に「莉々亜ちゃんが春佳ちゃんのことわがままって言ってたよ、一緒にいるのももういやだって」と伝えた。
すると春佳は教室中に響き渡る声で泣き出し、自分たちの話を本人に流されたと知った莉々亜たちは悪口を言い合っていたことを棚に上げて唯を非難した。
「なんでそんなひどいこと言うの、春佳ちゃんがかわいそうじゃん!」
「だってほんとのことじゃん、さっきわがままだってそっちが言ってたんじゃん」
「あたしそんなこと言ってないよ、それほんとは唯ちゃんが勝手に言い出したんじゃないの?」
その言葉で、その嘘で事情を知らない子も含めて教室中から大ブーイングをくらい、その日から唯は「お勉強だけの空気の読めない嫌な子」認定され、ついにはクラス全員からのいじめに遭うことになった。
元々両親のいいとこ取りをしたような顔立ちで美人に分類される唯は妬みの対象になることも多かった。
要するに唯がはじかれるきっかけなんて何でもよかった。多感な中学生の時期、唯は元々いつかははじかれる対象だっただけだった。
目を合わせて逸らされる、悪口を聞こえるところで囁かれる程度ならまだましで、鋏で体操着がズタズタにされた日には学校指定の店に足を運んで自分のお小遣いで新しい体操着を買う羽目になった。
体操服って意外と高いんだな、お小遣い四ヶ月分も吹っ飛んじゃった。せめて踏むくらいにしといてくれればよかったのに。切るとかいう言いつけられたらすぐ問題になることするなんてばかみたい、とどこか他人事のように考えて、それでも心はひどく傷ついた。
私は楽しく学校生活を送ってることになってるんだ。友達も多いって話してるんだ。
家族にも先生にも自分がいじめられてることなんて知られたくない。
ーーそんなプライドから唯はいじめを結局誰にも告白することなく、逃げるように知り合いが誰もいない県内一番の進学校に入学した。
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