第84話
その次の朝一番に起きた望は包装紙を見つけて「パパ、ママ、なんかある!」と言って二人をたたき起こした。陽向はピクリともしなかった。
「望のためのものだよ、開けてごらん」と奏斗が半分寝たまま言うと望は包装紙の中に頭を突っ込んで「昨日のぬいぐるみだ!」と叫んでそれを袋から出して抱きしめた。
「望のためにパパとママが買ってきたんだよ」と言うとそれを抱えたまま家中を回って部屋の紹介をしに行った。
まだ疲れていて眠かった奏斗は二度目の眠りについたが、十数分もしない間に望が戻ってきて「おなかすいた、ご飯食べたい! おーきーて、ごーはーん、パパさっき起きてたでしょ、望見てたもん、実は起きてるでしょ、パーパー、起きろっ」
と奏斗の上に飛び乗った。「うっ」と鈍い叫び声を上げた奏斗が仕方なく起きて陽向を寝かせたまま朝ご飯を作って食べた。
「今日も遊びに行きたい、もう一回あそこ行きたい」と言う望に、
「昨日は特別だったからまた今度な。パパもママも今日は眠たいから一緒に寝よう」と言うと不機嫌な顔になって泣き出したが、それだけ言ってまた寝た奏斗も陽向も起きる気配を見せないことが分かると仕方なくベッドに戻ってきた。
「遊ぼうよー」「んん……」と寝言しか帰ってこないのを不満に思ってリビングに戻ってくると、何度も読んでもらった絵本を眺めて時間を過ごした。
望もまだ昨日の疲れは残っていたようで、絵本に頭を挟んだまま眠りに落ちた。
夕方起きた陽向は隣に望がいないことに気付いて焦って奏斗を起こした。
「奏斗さん、もうこんな時間、それに望も隣にいない、どうしよう外出てたら」
その言葉を聞いて二人で焦ってリビングに飛び出してみると絵本に顔を挟まれて土下座に近い格好で眠った望がいて、二人で笑って写真を撮ってからベッドに望を寝かせた。「こんな寝方して、俺達だったら完全に腰やるな」「確かに絶対やるね……おなかすいた」
陽向は朝も昼も抜いていたのでおなかを鳴らして買い物に出かけていった。
帰ってきた頃には望の隣にまた奏斗が寝ていて、その寝相が二人とも一緒だったのを見て写真を撮ってから料理して二人を起こした。
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