第83話

夜になってキラキラしたパレードをその目に映しながら望は最前列でキャラクターに抱きつこうとして二人に止められた。


「さすがに駄目だよ、触らない代わりに一番近くで見てようね。ママも動画撮ってるから帰ったらまた見られるよ」


その時さすがに望も疲れてきていたようで反抗せずにすっぽりと奏斗の足の中に収まった。


「綺麗だねえ、キラキラだねえ」と言いながらその暗さと明るさのコントラストに少し眠くなってきたようで、パレードが終わる頃には望は完全に眠りについていた。


眠りが深いのは陽向譲りのようで、こういうときはもう起こしても起きないことは分かっていたので二人で望が欲しいと言っていた一番大きなぬいぐるみを買ってパークを出た。


帰りの電車の中で二人とも疲れた顔で話す。


「さすがにこれまで買ったら甘やかしすぎかなあ、望より大きいよこの子」


「甘やかせるうちに甘やかしたいからもう俺は買う気だった、いいだろ、前怒った分もあるしその分もくっつければ大義にはなるだろ」


「それもそうか、甘やかしちゃおう。自分より大きいぬいぐるみなんて夢だもんね……望はやっぱりほっぺたがぷにぷにだねえ、赤ちゃんの時から変わらないねえ」


「赤ちゃんの頃から可愛いけど更に可愛くなったな、陽向に似てきた」


「確かに私も前お母さんに似てるねって声かけてもらったの、似てるかな。……目とか?」


「目は特に似てるな。望は陽向の良いところをもっていったな、素直でまっすぐな目だ」


「やだ照れちゃう、奏斗さんの目も素敵だよ、凜々しくてかっこいい目」


そう言いながら二人とも寝落ちしかけて焦って電車から降りて家に着いた。


望を寝かせてその部屋の床に買ってきたぬいぐるみを包装されたまま置いた。


「ちょっと早いけどクリスマスプレゼントみたいだね」と言いながら二人ともお風呂は諦めてそのまま眠りについた。

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