第78話

それからは奏斗と林さんが楽しそうに話しているのを見ながら、林さんの奥さんと一緒に望と遊んだ。


「林のお兄ちゃんのママ、自動ドアって自己紹介しないと開かないんだよ、知ってる?」と目をキラキラさせながら望が聞いたので、奥さんは陽向の方を少し見てから


「え、そうなの? 知らなかったなあ、望ちゃんが自己紹介したら開いたの?」と聞いてくれた。


「うん、望です、パパとママがいます、三歳です、もうすぐ四歳になります、ママのご飯大好きですって言ったら開いたの! ウイーンって!」


「へえすごいんだね、望ちゃん魔法使いみたいで素敵だね。私知らなかったからびっくりしちゃった。自動ドアがあったら私も今度やってみるね」


「うん、しないと開かないから開かなかったらちゃんと自己紹介するんだよ」


「そっかありがとう。良い勉強になったなー、望ちゃんは物知りなんだね」


「うん、何でも知ってるの! 絵本いっぱい読んでるから何でも知ってるんだよ! そうだ、ミカンのジュースはね、工場の人が入れてくれてるんだよ、だからミカンジュースはミカンの味がするんだよ、知ってた?」


「へえそうなのか! 知らなかったなあ。すごいね、望ちゃん何でも知っててかっこいいね」


「望ママにはちみつの匂いの口紅買ってもらったの、だからかっこいいじゃなくってかわいいんだよ」


「素敵だね、今もしてるのかな? とっても似合ってて可愛いね」


「今もしてるの! 大人の女の人はご飯で口紅が落ちちゃったら塗り直すんだよ、だから望も塗り直してるの」


「そうなんだ、望ちゃんは本当に物知りだね。よかったら大事な口紅見せてもらえる? 私も望ちゃんみたいになりたいな、真似してみたいからよかったら見せて?」


「いいよ、望の宝物箱に入ってるんだよ、こっちきて。……これだよ、これでお化粧してるんだよ」


「うわあ素敵だね。他にもキラキラしたものがいっぱい入ってるんだね、これはお花の形だね、かわいいね」


「お祭りでパパが買ってくれたの。宝石なんだよ、可愛いでしょ。こっちはハートなんだよ、ハートのものは可愛いんだよ」


「すっごくきれいでかわいいね、望ちゃんの持ち物お姫様みたいでとっても素敵だね、私も真似してみたいなあ」


「望の真似しても良いよ! 特別だからね」


「やったあ、特別ね、うれしいな、望ちゃんありがとう」


「いいよ、特別に良いよ」



たくさん褒められた望はとても満足げで、二人が帰ってからも「望物知りでかっこよくて可愛いんだよ!」と自慢していた。


その日は望と三人で川の字になって全員で早く休んだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る