第75話
次の休み、二人は望を連れてショッピングモールの中の映画館に来ていた。
自動ドアの前で四苦八苦する望を見て、奏斗が「望、自動ドアは自己紹介しないと開かないんだぞ。パパのことみてろ」と言った。
自動ドアの一歩手前に立って「岩崎奏斗です、奥さんは陽向で望のお父さんです。毎日お仕事頑張ってます、世界一かっこいいパパになります」と言いながら一歩前に出た。そしてその動きで自動ドアが開いた。
「ほおーー! パパすごい、魔法みたい! 望もやる!」と目をキラキラさせながら言って自動ドアの前に立った。
「岩崎望です、三歳です、もうすぐ四歳になります、パパとママがいます、ママのご飯が大好きです」その言葉でドアの向こう側にいた奏斗が少し近寄ってきてまた自動ドアが開いた。
「ママ、見てた?! 望にもできた!! ママもやって、一緒に映画見たいからやって、こっち来て」
「見てた見てた、すごいね。分かったよ、じゃあ見ててね。私は岩崎陽向です。素敵な旦那さんと可愛い娘がいます。可愛い娘の名前は望です。二人のことがとっても大好きです」と一歩前に出るとまた自動ドアが開いた。
「ママにも魔法使えたね、自動ドアすごいね、かっこいいね、楽しいね、すごいんだね」
そのまま映画館に入る。
「そうだね、そうだ望この辺の匂い嗅いでごらん、甘い匂いがするよ」
「ほんとだ! この甘いの何?」
「キャラメルポップコーンだね、特別に一緒に食べながら映画見ようか。ペンライトの準備は良いかなー?」
「完璧ですママ隊長!」
そのままチケットを渡して、買ったポップコーンと飲み物とペンライトを手に三人でシアターの中に入った。
席は陽向が見えやすいようにと、スクリーンの近くの左側を取っていてくれた。
「そう、ここが望の席だよ、隣にママもパパもいるからね」「うん、分かった。隣にママとパパいる」
そう言いながら望は両手にいっぱいのポップコーンをすくって取って食べ始めた。「これ甘い、おいしい、望これ好き」
「ほーらまだ始まってないんだからポップコーンそんなに食べない、映画始まる頃にはなくなっちゃうぞ、映画始まるまでの間没収ね」
「やだパパやだ望食べたい。ママ、パパが望に意地悪する」と口いっぱいにポップコーンを詰め込んだ望が抗議してきた。
「してないよ、でも映画見てるときにポップコーンなくなっちゃったらさみしいでしょ? だからもうちょっとだけ待ってようね、見ながら食べようね」
不機嫌な顔になった望だったが、映画が始まると目をキラキラさせてポップコーンを食べてペンライトを振りながら映画に夢中になった。
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