第69話
望が二歳のうちにできるようになったことも三歳のうちにできるようになったことも全て録画されてDVDに綺麗に並べられた。
望も昔の自分を見るのが大好きだったようで「赤ちゃんの頃の望みたい」とよく言い出すようになっていた。それを見る度に「可愛いね」と言っている二人を見ているのも望の楽しみだった。
「ほらはいはいしてるよ、望はまだこの頃は今みたいに上手に立てなかったけどもう望は上手に立って歩けるね、大きくなったね。
この頃はまだお話もできなかったけど、今はママともパパともたくさんお話ししてくれるね、ママもパパもすっごく嬉しいんだよ。
この頃赤ちゃんだった望は夜いっぱい泣いてママも心配しちゃったけど、どんどん健康に大きくなってくれてママすごく嬉しいな。食べられるものも増えたもんね」
「望最近ママのご飯全部食べられるもん。でもこの中の望全部床にぽいしてる。望よくないね」
「赤ちゃんの頃はしょうがないんだよ、ほら見て望、このご飯は好きだったみたいでよく食べてくれたの。あーんしてると口開いてくれるでしょ。可愛いんだよ。この時はママ作った甲斐があってすごく嬉しかったな。……でもこれは嫌いだったね、食べないって顔して口閉じてるもんね、でもそれも可愛かったんだよ」
「望今なら食べられるよ、これも食べられるようになったよ、望偉いよ」
「偉いね、お姉ちゃんになったもんね。望これからもっともっと美味しいものに出会えるよ。この世界にはもーっと美味しいものがたっくさんあるんだよ」
「ママのご飯がいい、望ママのご飯好き。だからね、だからね、今日は望の好きなの作って欲しい」
「ママそう言ってくれるとすっごく嬉しいな、望ぎゅー、偉い子だねえ、かわいいねえ。……うん、じゃあそうしちゃおっかな、望の好きなものいっぱいのご飯にしよう」
「やったやった、パパ、今日望の好きなご飯だよ、望がママに言ったら良いよって言ってくれたんだよ、望の好きなご飯いっぱい食べるんだよ、パパきーいーて、望の好きなご飯なの」
「聞いてるよ、よかったねママは優しいね、望のおかげで美味しいご飯たくさん食べられてパパも嬉しいな。じゃあパパと一緒にママのお手伝いしようか」
「する! お手伝いする、ママみたいになるの」
望の大好きなご飯を食卓に並べて三人でおなかいっぱいになるまで食べた。望は「食べたらね、眠たくなっちゃうんだよ。望ね、いっぱい食べたからね、今眠たいの」
と言って二人に見守られながらすやすやと寝始めた。
二人になってからもう一度DVDを再生してその小さな望を眺める。
「この子いつの間にか夜もぐっすり寝るようになって身長だっていつの間にか大きくなって、気付いたらきっと大人になってるね」
「そうだな、俺たちも孫の顔が見られるくらいまでは長生きしなきゃな」
「望が家を出るときが来るんだもんね、さみしいな。……でも長生きしなくっちゃね、望のためにも。孫の顔、私も見てみたいし。幸せだね」
「ああ、幸せだ」
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