第67話

休みの日には少し遅れたバースデーフォトを撮りに行った。着替えさせられて何が何だか分からなくなって泣いている望をなだめてなだめて、なんとか写真を撮ってもらった。写真を撮ってくれる人もおもちゃやぬいぐるみでカメラの方を向くように、望が笑顔になるようにしてくれていた。


つかまり立ちをしている写真、人形と向かい合ってニコニコしている写真、電話のおもちゃで遊んでいる写真。


三人で並んだ写真も撮ってもらった。どの望も可愛くて仕方がなくて、アルバムができた日には三人で手を繋いでゆっくり帰った。


その写真を大切になぞりながらそれを撮った日を思い出して家で一枚一枚眺めた。


「これかわいいね、この望も可愛い。ああ全部可愛い、どうしよう奏斗さん、全部可愛いようちの子世界一可愛い。この電話かけてるのもぴったりだよ、絶対働ける子になるこの子。それに奏斗さんもかっこいい、さすが」


「陽向と俺の子どもならどこでもバリバリ働くかもな。陽向もいつも通り可愛いよ……この写真なんて最高に笑顔じゃないか、これは毎年撮りに行くので決まりだな」


「確かに、毎年増えていったらすごく素敵だね、毎年撮ろう絶対。良い行事ができたね、毎年楽しみになるね」


「望、これが前撮ってもらった望だよ、可愛いでしょ、ぜーんぶ望なんだよ、可愛いんだよ」


「ママ、これかわいい」


「どうしようこの子私のことまで褒めてくれた?! もう可愛いでしかないよ、ちょっとこれ以上可愛くなられたら困っちゃうくらいだよどうしよう私が耐えらんない」


「これからもっと可愛くなって、でそのうちかわいげがなくなるときも来るんだろうなあ、その時も一緒に写真撮りに行ってくれるかどうか」


「奏斗さんみたいなかっこいいパパなら自慢できるパパになるから絶対毎年三人写るよ、二十歳になるまで続けたいなあこれ」


「二十歳になって振り袖で撮ってもらったらその時にプレゼントにしてもいいかもな」


「それすごく素敵だね! うーんでも家に取っておきたい気もする、まだこの子一歳になったばっかりなのにもう既に子離れできない自分が見えるよ私」


「俺もだよ、一緒に子離れするときは泣けば良い」


「絶対泣いちゃう、なんで私の家族泣かないでいられたのかわかんないもう。愛されてはいたけど何でだろう、年の功ってやつかな、私達に身につくかなそれ」


「どうにかして身につけるしかないだろう、なんとかなる」


二人の愛情をいっぱいに受けて望はぐんぐん育っていった。

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