成長と幸せ

第63話

それからも毎日陽向は望に話しかけ続けた。


「今日は上手に寝返りできたね、すごいね望。ほっぺたがぷにぷにしててとっても可愛いよ、今日はご機嫌だね望。じゃあ気をつけて一緒にお外に出てみようか。よーしママ気合い入れて準備しちゃうぞ、それまで回るおもちゃ見てよう。かわいいね、回るの楽しいね」


「お外の光はどうかな? あ、ちょっとまぶしかったね、嫌そうな顔してる。ごめんね。望これが帽子だよ、被ってみようか。まぶしくなくなるよ、……そうそう、周りがよく見えるようになって嬉しいね。


じゃあ一番近くの公園まで行ってみようか。ちょっとあっついかな? 大丈夫そうだね、よかった。じゃあこのまま出発でーす。


パパきっとママと二人っきりで望が公園まで行ったって聞いたら羨ましいなって思うよ、パパも望のことだーいすきだからね。パパは今は頑張ってお仕事してるんだよ。もうちょっとで公園です。


望、外の風が気持ちいいね。気持ちよさそうな顔してる、パパに見せてあげたいな。カメラにちゃんと写ってるかな? よし写ってる。可愛いぷにぷにのお顔です。


よーし公園に着きました。砂場行ってみようか。……わっ、砂嫌だったか。ごめんね望、足拭いてあげるからおいで。……よし、綺麗になったよ。じゃあここのお山に登ってみよう。


望に見えるかな? いつもよりすっごく高くて綺麗だよ、望、あ、見てる。嬉しそう。かわいいね、そのお顔ママ大好きだよ」


「じゃあゆっくり帰ろうか、望ちょっと眠たそうな顔してる。眠たいなー君? よしよし、おうちに着いたらまた涼しいお部屋でゆっくり寝ようね」


「望がピクリとも動かずに寝てます。でもスースー言ってます。かわいい。こんな時までかわいい。最高に可愛いよ君、全世界で一番可愛いよ」



そして奏斗が帰ってくる度に奏斗に一日のことを話した。


「今日は上手に寝返りできたしママと一緒に公園まで行けたんだよね、風が気持ちよかったねー望。……あ、ちょっと嬉しそう」


「陽向ずるいな、俺も望と一緒に公園行きたかったんだけど」


「ほらパパやっぱり羨ましいってしてるよ、予想通りだったね望」


「予想までされてたか……」


二人は休みの日には必ずその週に陽向と望が二人きりで行ったところを網羅した。


「パパやきもち妬いてるよ、パパは望が大好きなんだよ」


「そうだぞ、パパは望が大好きなんだぞ。陽向カメラ貸して、……ほら望、ママはこの綺麗な女の人だよ。ママもパパも望のこと大好きだよ」


三人はその時陽向が病気を抱えながらも幸せに過ごしていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る