俺が陽向の目になる
第53話
その週末に行った内科では偏頭痛ではないかとのことで、今飲んでいるのよりも少し強い鎮痛剤をもらって帰ってきた。
「大丈夫だったか? なんて言われた?」
「大丈夫、偏頭痛かもって言われて普通に痛み止めのお薬もらって帰ってきた」
「偏頭痛か、もしかしたら妊娠前のもそっちだったかもしれないな、気づけなくて悪かった」
「奏斗さんが謝る事じゃないよ、私だって妊娠のせいだと思ってたし。ただ目の方はここじゃなんとも言えないみたいだって。今日これから紹介された近くの眼科も行ってくるね」
そう言って出かけた陽向は近所の眼科で乱視の可能性を指摘されただけで、またすぐに帰ってきた。
「どうだった? 何もないといいんだけど」
「乱視かもって。私昔から乱視ちょっと入ってたからパソコン見過ぎて強くなったのかな、明日よかったら眼鏡屋さん付き合って欲しいかも」
「それくらいいくらでも。俺も最近パソコン叩いてきたのが年なのか目に来てる気がするから自分の分もそろそろ見に行くかな、ちょうど良い機会だし」
「じゃあ明日は三人で眼鏡屋さんだね。……望は目が悪くならないといいねえ、遺伝してないと良いんだけど」抱いている望の顔を覗きながら陽向が言った。
「俺は元々はよかったけど仕事のしすぎで悪くしたたちだから、俺に似れば大丈夫だな。そっちの家は……お父さん眼鏡だったな確か」
「そう、そんなことよく覚えてるね、……あ、望見せに最近行ったばっかりか。私記憶抜け落ちてるのかな全く。いつになっても物覚えがよくならない。
お父さんは元から目悪い方だったかな、緑内障も入ってたし。薬使うと目の周りが黒くなるとか言って全然目薬もしてないけど、今のところ特に困ってないみたい。
まあパソコン作業でもないし、寄ってくる蛇見逃したりしなきゃ大丈夫だからなーあっちは。でも私は小さい頃からそんなによくなかったから奏斗さんに似て欲しい。毎回学校の視力検査で引っかかってたから私に似ないで。望頑張れ」
「さすがにもう遺伝子的には決まってるだろ」
「そんなこと分かってるけど私達のいいとこ取りをして欲しいじゃん、ねえパパ?」
「まあそれはそうだな、目は良いに超したことないし、眼鏡なんてしたくなったらレンズ抜きでも何でもできるからな。車の運転とかも目は良ければ楽になるし」
二人とももう既に親馬鹿っぷりを発揮しだしており、少しでも相手の良いところに似て欲しいと毎日のように言うようになっていた。
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