新しい幸せ
第41話
結婚してからも二人は仕事の都合上名字を変えると面倒なことが多かったため、プライベートでは岩崎陽向になったが仕事中は陽向は”本郷”のままだった。
プライベートでの名字が変わってからも二人は変わらず仕事のできる有能な社員のままで、周りからは”恐ろしいほど仕事のできる夫婦がいる”と言われて面白がられていた。
異変が現れ始めたのはその頃だった。異変と呼んで良いのかも分からないような小さいことが最初だった。
「本郷、顔色悪いぞ、大丈夫か」
「大丈夫です岩崎さん、ちょっと頭痛いだけで。多分だけど今日気圧下がってるんだと思います。外ちょっと曇ってますし。頭痛薬もありますし問題ありません」
「あんまり無理はするなよ、もし無理そうなら早いところ仕事こっちに移せ。俺も今は割と手が空いてるから俺がやってもいい」
「大丈夫です。今週分あとほんのちょっとしかないんで」
「……は? 本郷お前あの量の仕事もう殆ど捌いたって言うのか、今週はかなりの量回したはずだぞ」
「捌きましたとも、こちとら伊達に鬼の下で働いてないんで仕事早く終わらせるのには自信あるんですよ」
「にしても今週は忙しかっただろう、いつそんなに進める暇があったんだ……本当に全部終わってやがる」
「鬼に育てられた人の子は鬼を超しましたかね?」
「さあな、もしかしたらだ」
「よっしゃ! やる気でたんでもっと回してくれても良いです」
「もしかしたらだと言っただろう、絶対そうだとは言ってない」
「いいんですこれで嬉しいから。早くしないと仕事しませんよ、今機嫌の良いうちに回してください」
その純粋に褒められた言葉を聞いて陽向は薬で吹っ飛ばした頭痛など忘れてにこにこしながら仕事に打ち込んだ。
それを見た社員から「鬼の嫁も鬼のように仕事ができるときた、しかも笑いながら案件こなしてやがる。全く恐ろしいもんだ」ともう一度言われていたことには気付かなかった。しかも陽向はその量の仕事をこなしながら、後輩の育成も手伝いも当然のようにやりきっていた。
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