第26話
二人はそのまま指輪を探しに銀座に行った。
銀座で電車を降りようとした奏斗に陽向は一瞬で止めようと試みるも、引きずりおろされて銀座の街を歩いていた。
陽向は安い服を着てきていたので恥ずかしそうに奏斗の半歩後ろにくっついて歩いていた。
「待って奏斗さん、私こんなところで買うようなものじゃなくて良いです。もっと安いのでいい、こんな高い街に来ると思ってなかったから洋服だって普通のままだし、お店入るのも恥ずかしい。それに私が買えるようなお店もない」
「大丈夫だから堂々としてろ、安いのでいいなんて言うな、そんなこと彼女に言わせた日には男が廃る。何のために毎日あんだけ働いてると思ってるんだ。金だって散財するタイプじゃないからいいんだよ。大体俺は彼女に婚約指輪まで買わせるような甲斐性のない男じゃないぞ」
「婚約指輪?! ちょっと待って、今婚約指輪って言いましたよね、普通に社内にアピールするために買う指輪じゃないんですか? 私そのつもりで今日来てて婚約なんて、」
その言葉に一瞬で奏斗が機嫌の悪い顔になった。
「婚約なんてするつもりじゃないってか、俺は付き合い始めた最初から本気のつもりだったが陽向は違うのか。俺から婚約指輪を受け取る意思はないって事でいいな? じゃあ帰るぞ、ほらついてこい。駅戻るぞ」
「待ってくださ、混乱してて、だってさっきそんな話しなかったから、まさか婚約指輪なんて思ってなくって」
「付き合って半年は経つだろう、それにお互い結婚適齢期の男女ときた。俺は最初から、お前の告白を受け入れたときから結婚するつもりでいたぞ」
「そんな、それはそうかもしれないけどでも、……私でいいんですか」
「俺が陽向がいいと言ってるんだ、結婚まで考えて告白を受け取った。それで俺と婚約する気は」
「あります、すごくあります、一生一緒にいたいです。私でよかったらふつつか者ですがよろしくお願いします」
「全くまたこいつは無自覚に煽りやがる……」
そう言いながらもその顔は機嫌のいい顔に戻っていて、二人で陽向にとっては目のくらむような額の指輪を奏斗はあっさり即決した。
「なんでこんなお店で一番高いやつ選んだんですか。もっとお手頃なのもあったじゃないですか」
「だってこれが一番綺麗だって言ってただろう、これ見てるときの陽向が一番嬉しそうだったぞ」
と自分の様子をよく見られていたのも知って、陽向は恥ずかしさと嬉しさと申し訳なさといろいろのごった返しの考えの中でいつも通りの家に帰ってきた。
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