第24話
そんな心配してくれる奏斗がいることを分かっていれば、陽向は飲み会には奏斗なしではできるだけ行かないようになっていた。
そしてたとえ行ったとしても飲む量もセーブできるようになっていた。飲み方も奏斗のおかげで多少心得ていた。
上司から勧められる酒にも「ごめんなさい、私もうギリギリですんでウーロン茶ください、これ以上飲めません」と言えるようになっていたし、それでも酒を勧めてくるようなメンツがいるときには奏斗が代わりに飲んでくれた。
その飲ませてくるメンツも奏斗から叩き込まれて、奏斗がいないときにその人込みで飲み会があるときは断るようにしていた。
奏斗がいる飲み会では変わらず強い酒が回ってくる度奏斗が飲まなくていいと言ってくれたし、その分多少無理をしてでも奏斗が飲み役に徹してくれた。
「か……岩崎さん、大丈夫ですか? 起きてます? 結構顔赤いですけど」
「お前に心配されるこったない、まだ大丈夫だ。それよりお前は飲み過ぎんなよ」
「すいませーんこの上司限界来てるみたいなんでお酒回すのストップでお願いしまーす、これ以上飲ませたら急性のアル中になりまーす」
奏斗の大丈夫は大抵大丈夫じゃない時で、それを部下としても彼女としても分かっていた。
「じゃあこの今持ってきてもらった酒本郷飲めよ、まだ今日全然飲んでないだろ」
「私飲み過ぎで最初の飲み会の後鬼上司に鉄槌食らったんでこれ以上飲んでまた怒られたくありませーん。先輩こそ飲んでらっしゃらないんですから、もらってください。あと、これでも愛しい彼氏が家で待ってて酔って帰ってきた日には怒られるんです。だから一人で帰れるところまでしか飲みません」
あ、言い過ぎた。やっば、今のなし、そう言おうと思った瞬間に酔っ払いの集団は大いに盛り上がった。
「本郷に男か、岩崎が泣くんじゃないのか? あれでもお前のことかわいがってるのに」
「本郷さん彼氏いたんですか! どんな人なんですか? まさか社内恋愛ですか?」
その場にいた全員が陽向に興味津々になった。
「かっこよくてかわいい彼氏でーす、教えませーん、それ以上訊くならもう帰らせて頂きますけどー」
そんな大事な彼氏なのか、岩崎とは大違いだ、今度見せに来いと全員からせっつかれた。
陽向はそれ以上の質問をシャットダウンしてウーロン茶を飲みきって、「もう訊かれたくないんで帰ります! お疲れ様でした!」と叫んで盛り上がった会場を抜け出した。
「……おいお前……言いやがって……」
と後ろで岩崎が机に顔を伏せていることに陽向は気付かなかった。
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