第一章 1ー1

「フレイ!」

 女性的な発声を響かせて、高らかと呼ばれたのは全身紅に包まれた異様な姿の男の名。

 声を大にして放つ想いには、少々不安げでありながら、強い警戒心を持つ事を助言する発音までも表現されていて、【フレイ】は緊張感を身体の隅々まで浸透させている。

 紅を纏う身体に相反する右肩には、少しの橙と深い黒が混じる【№02】という謎の刻印が迫力を増して、この存在を際立たせる。しかしインパクトの強さなら顔のパーツも引けを取らない。顔面も紅を纏うのだが、その主張など遥かに超越する外見が存在する。それは柔い光を凝縮させて丸く白光する双眸に加え、唇は物体を失くした事で口の面積は広く露わであり、白い歯とピンクの歯茎がむき出しのまま、極めて恐ろしい形相を露骨に披露している。

「フレイィィぃぃいぃいぃい?」

 対なる金切り声で叫ばれたフレイの名は、愉悦と歪んだ愛も表現させて、粘着質で甘ったるい愉快な感情を曝け出すように、フレイへ急接近を試みる全身緑の男による牽制。

「アイリィィン! 君は選ばれた存在に変わりないんだ! これ以上選択を誤るな!」

 不気味な緑の縞模様から、衛生管理が行き届いていない事を知らせる爪を伸縮自在に操る【アイリーン】は、この説得に耳を貸す事も無く、視界からフレイを外さず凝視したまま鋭く尖った三本の爪に全神経を集中させて、フレイの心臓へピンポイントな串刺しを成功させた。

 アイリーンは皮膚の殆どを故意に剥がしており、それは軽く皮下組織にまでも到達させるほどの悲惨な状態で、緑の濃淡で表現された筋肉と血管は完全に剥き出しだ。

 皮膚の機能を補う為か、粘着く緑の体液が身体を潤わせるのだが、体液が地面に接触しただけで地面を溶かして、最悪、物質そのものが消え去る。この現象にたじろぐはずのフレイは、その予想を大きく裏切り、真っ向から受け止めた。おぞましい緑の爪がフレイの体内に広がり、肉体を確実に蝕む。身体は紅を失くし、白光する瞳は輝きを失くし、全身の隅々がどす黒い黒へ変化の兆しを見せた頃、映像を巻き戻しすようにフレイは紅と光を取り戻す。

「フレイィイィイイぃぃいぃい!!!」

 この惨劇を喜劇に変えるアイリーンの歓喜の悲鳴によって、フレイの持つ《自己治癒能力》が発揮された事を明確に提示した。貫かれた心臓に開いた風穴は、離散した血液と細胞を呼び込むように、何一つ残さずフレイの身体へ戻って行く美しい紅。アイリーンとは百八十度異なる奇妙さで魅了される。つまりこの戦いは、極端な異能者同士による苛烈な攻防戦。

 フレイの身体に大量の毒素が飛び散る事で、血肉に迫る早さで肉体を侵食していく中、焚かれた煙ですら逆再生を起こして揮発する過程までも遡ると、遂にフレイは全てを取り戻す。

 そんなフレイの能力に心底魅了され、余韻に浸るアイリーンに対して、唐突なフレイの回し蹴りが破格の重力で地面に引き寄せられる中、斜め下から突き上げる膝蹴りがアイリーンの顎から頬に掛けて骨が砕ける鈍い音を響かせた衝撃で、連鎖を起こして頭蓋骨までひび割れる。

 皮膚を失くした軟弱な身体が規格外の破壊力に持ち堪えるはずも無く、若干飛び出ていた目玉も遠く飛び出る事で、アイリーンの命の行く手、その全てを阻んだ。

 この重篤な損傷へ導いた容赦ない攻撃から、頭蓋骨の割れ目に脳みそがジワリと滲み出る実感を認識するも、これほど無残な損傷を受けたにも関わらず、地面に這いつくばる事が許されず、身体を小刻みに揺れる事だけが許された状態であり、無理矢理この生を繋がされている。

 そう、フレイはこの状況へと故意に追い込んだのだから。

 そんなフレイから滲み出る上から目線の情と余裕が、アイリーンの癪に障る。

 すぐさま使える脳の機能に命令を下すと、事前に用意していた左薬指の爪根を体内へ侵入させ、内臓を貫通させながら一直線で脳の中枢を貫いた。この瞬間、アイリーンの身体は若干震えながら脳の重さで後ろに倒れ、地面の衝撃を受ける直前で身体の細胞は瞬時に灰へ様変わり、空中に散布されると、肉体は空の藻屑となり、生きた証は何一つ残さず消えて無くなる。

「……逃げたか」

 アイリーンの痕跡を残さず、肉体が命尽きる前のほんの一瞬、目玉は無くとも露骨な表情でフレイの助けを必死に訴えていた。それは感じた事の無い痛覚を受け入れられず、唐突な死の恐怖に怯え、涙を流す瞬間すら許されず、死の覚悟も無いままただひたすら生に縋った人間の末路。この死の過程と非情なカラクリが、アイリーンの鬼畜さを存分に表現している。

 それはこの朽ちた屍が一般人の中から入念に吟味され、肉体を強奪した上、命をただの玩具として扱ったアイリーンの暴挙と言わざるを得ない。通常、スムーズな憑依を完成させる為には、相手を仮死状態に誘導させる複雑な形式に導く必要があるが、アイリーンは相手へのリスクなど考慮せず、強引に重要な精神を断ち切り、この手荒い憑依を可能にしたのだから。

 拒否権は無く、拒絶も不可能で、永久にアイリーンの操り人形として育っていく他無い不運にも憑依されてしまった人間は、正常な意志と豊かな思想を持つ自由を掴めないでいる。

 何よりアイリーンは〈死しても即時生き返る〉という、稀代の能力に長けている。それは生死を廻るサイクルが人知を超越した、異常なまでに速いのが要因。その間、ものの数秒。

 また厄介な事に、《過去の記憶を全て引き継いだまま転生できる》独自のルートを確立し、それ故、人生の経験と成長の過程も必要なく、それによる負の対価を醜悪奸邪な姿形で清算しても、仲間内で幾らでも寄生出来るなら、この生物は何一つ問題にしないし、気にも留めない。

「アイリーンが去ったのね。まぁ、今回アイリーンに関しては見逃すとして……」

 フレイのすぐ傍まで近寄ったのは、真紅のフレイと対照的な漆黒を全身に纏った女性らしき人物。声と言葉使い、身体の線から導いた答えではあるが、確かな性別とは断定できない。

「分かっているの? 私たちが最終目的とするのは《人間の一掃》。この程度で同情をしていては後先不安しか残らないわ。貴方の課題はとにかく気を強く持つことよ。その中途半端な罪悪感は誰一人として救えなければ、誰一人として求めてもいないのだから」

「分かっているよ、ジュノー。……忠告を、ありがとう」

【ジュノー】と呼ばれた人物は、フレイの欠点を痛いほど突いてくる。事実アイリーンはその中途半端な優しさを受け入れる姿勢は一切無かった。それが答えと心に再三訴えてくる。

「まったく、貴方のその聞き分けの良さは問題よ。本当、大問題ね」

 声から滲み出る呆れた物言い。フレイとよく似た姿形で、頭からつま先まで漆黒を纏うジュノーは、発光する赤眼が美しい黄金比のアーモンドアイ。弧を描くような高い鼻筋に加え、唇には太い黄金の重厚なホチキスがランダムに打たれており、簡単には開閉出来ないインパクトの強い顔面は、フレイのそれと引けを取らない不気味さで一層目に焼き付く。何よりフレイとは対照的な赤で灯した、左肩に刻まれた【№01】の刻印がこの存在を強く主張する。

 実はこの二人、かなりの高身長でジュノーで軽く180を超え、フレイに至っては優に190を超えている。付け加えジュノーは高いヒールを履いているのだから、フレイとそう変わらない背丈で、この強い存在感を際立たせる重要な要素の一つであるのは間違いない。それぞれ一色で統一された風貌から、ジュノーは《黒塗り》、フレイは《紅塗り》と名称している。

「とりあえず、この異空間を回収するわ」

 ジュノーの一言を皮切りに空間が捩じり始め、手のひら程度の黒く小さな渦を作り出すと、この空間を強力な掃除機で吸い込むように黒い渦が回収して、オブラートを一枚剥がすような現象を見せた。一見何の変哲も無いように見えるが、アイリーンとの死闘の痕跡、下界への深刻な影響、加えてジュノーたち存在の露見ですらも風呂敷に包んだように、何事も無かったかのように元通りに戻していく。非常に完璧で高度な空間を組み立てていたようだ。

「貴方の性格上、難しい注文は承知の上よ。でも私たちはこれ以上知らぬ顔が出来るほど馬鹿でも阿呆でもないわ。この危機的状況、理解出来て?」

「大丈夫、ジュノーがそこまで心配する必要はないよ。僕は君が思うほど愚かじゃない」

 確かな意思を伝えるフレイの言葉を聞いたジュノーは、塵すら失くした名も知らぬ人間が最後を全うした場所を見る。ジュノーにも多少の遣る瀬無さと悔いは残っている。しかしこれ以上の感化も、同情すら捧げる必要も無いと言わんばかりに、早い帰宅をフレイに促した。

 アイリーンと対峙したあの怒涛の気迫から大きく反転して、素直でお人好しなフレイの二面性も露見したが、元が根から優しい性格なのは言動で十分窺い知れた。恐らく体格の良い身体に映える豪快な荒業が、フレイと言う存在を必要以上に感化して、精神に支障を来たす事態を避けるために、心の在り方を分断してまで感情の棲み分けを無意識に行ったとも推考出来る。

 気持ちを切り替えて先導するジュノーの後をフレイが追う事で、この場で起こった波乱の出来事全てが消えた中、最後の人的証拠も行方を晦ます。これは全方位を見渡せる高層ビルの中も、一際高い屋上の一角で行われた苛烈な死闘。事実命が一つ失われた上、生きた痕跡は勿論、関わった人々の記憶に至るまで、ごっそり削除される事態こそが本当の惨劇だろう。

 周囲を見渡せば大規模な繁華街を主軸に、この世界に眩い照明の装飾で街を照らす。それは深夜になっても人間の行き来が途絶える事無く、寧ろ昼間以上の活発な活動で夜の街を謳歌する愚行こそが、人間に理性の無い行動へ誘う悪魔を呼び覚ますのだろうか。そんな酒と香水の匂い漂う街を足蹴にして、ジュノーとフレイは颯爽と目的地へ向かって走った。

 この時、この二人の身体と見た目とは全く異なる生体へと姿を変えていた。細胞を骨の髄まで分散させて、ジュノーは漆黒の、フレイは真紅の小さく丸い核を中心に置いて、豆粒程度の細胞を米粒以下に縮小させて各々の核に吸着させると、驚愕な変容をこれ見よがしに魅せる。

 最終的に形作ったのは、紅毛に碧眼のムササビのフレイと、黄金に輝くスカラベとなったジュノーだ。大いに異なる姿を披露しながら、黄金のスカラベが紅毛のムササビの首元に掴まる事で鈴のように擬態化する。万が一、人目に晒される事も考慮した対策を講じているようだ。

 実物より小型化した紅毛のムササビは、小回りを利かせて目的地へ颯爽と突き進んでいく。

 そんなこの地域で最も身近な大学病院に辿り着くと、ある一室を目的に通気口からするりと侵入を開始。暗がりの中、一人夢中でパソコンにのめり込むある医師ターゲットを視界に捉えた。

 際立つ色を惜しげもなく披露して、真正面からターゲットに飛び掛かるムササビとスカラベ。

 空中で二つの細胞は再び分散を行い、米粒程度の細胞を格段に小さく、原子レベルで離散させてターゲットの角膜に少々痒い程度の刺激を与えながら、突き進む色の異なる二つの核。

 細胞は核を追って流れに沿うように、欠片一つ残さず眼球への侵入を可能にした。

 この過程は一度の瞬きの僅かな時間で行われ、光る映像に張り付くターゲットに気が付く要素は無く、容易に眼球内部の硝子体へ侵入出来たジュノーとフレイ。仄かに明るい空間の中で更なる身体の変化を施して、今までの中で最も人間らしい容姿で最終的な成形を終える。

 ジュノーは艶ある黒髪のおかっぱに合わせた紅白の生地に彩る金糸で華の刺繍を施し、高貴で複雑な細工の着物にも劣らない、美しい碧眼の双眸に加え、高雅で凛々しい顔立ちを見せる。

 フレイに至っては短髪の鮮やかな紅髪が目立つ中、衣服を重厚な黒で統一させた事で厳格なイメージを与えるが、同じく宝石のように輝く碧眼に加え、優美で優しい顔立ちをしている。

 黒塗りや紅塗りの印象は殆ど引き継いでおらず、何より極端に縮めた背丈は幼い子供も同然で、素顔を惜しげもなく披露したこの容姿には、目撃した者に最も安堵を与えることだろう。

 そんな二人が人としての最終形態を終えてすぐ、ジュノーは一人ある行動に出た。

 左眼に少し力を入れて安全を伝えるような言葉を幾つか放つと、左眼から香を焚くような煙を集約させて、眼球から何かを外へ誘い出す反動で、ジュノーの身体は少々海老反りになる。

 眼球から焚き出た少量の煙には、粒子の細かい砂金らしきものがキラキラと輝き、地面を踏み締める金色の毛並みが眩い碧眼のモモンガを具現化させた。変容はこれに収まらず、新たに細胞を散在したかと思えば、金色の核と細胞を膨張させて再び吸着させると、出現したのはジュノーたちとそう背丈の変わらない腰まであるブロンドの軽めのパーマに、ピンクのロリータ仕様のワンピースが似合う可憐で愛らしい顔立ちに加え、三人同じ碧眼の持ち主が現れる。

「フレイ! お疲れ様!」

 外見から見て明らかなほど、この二人とは性格からテンションに至るまで全てが異なる少女。

 大好きなフレイに身体を密着させて、無事出会えた喜びを全身で表現している。

「ステラもお疲れ様。大丈夫だった? 怖く無かった? 体調は崩していない?」

 フレイは【ステラ】に対するあらゆる心配を巡らせて、心身の健康を優れた視覚と聴覚で丁寧に確認している。如何にステラを大切にしているか、よく分かる一面だ。特に何でもない、これと言って重要でない話題にもそっと花を添える様子から、目に入れても痛くない溺愛ぶりで全てを受け入れる懐の深さ。聞き上手な才能に恵まれてもいるが、誰よりも愛情を注いでくれる、そんな心底優しいフレイだからこそ、多情多感なステラの心を捕まえて放さない。

 当然この三人は普通の人間ではない。宇宙が出来て程なく天命を授かり、太陽が出来て程なく生を享け、地球が出来て程なく人のカタチとして世に生まれ出た、今を生きる不老長寿。

 しかしながら歳を重ねて経験を積んで、染み出る厳格なイメージはジュノー以外ほぼ見受けられず、特にステラに関しては感覚と感性が見た目相応な子供のまま。そんなステラを放って置けないのは、フレイの情かそれとも性か。ただ目に入れても痛くない存在なのは明白だ。

 しかしフレイにも無限の愛情を一心に注ぐ対象がもう一人いる。話に夢中なステラに強く抱きしめられた瞬間、真っ直ぐ目線を送った先の、たった一人で仕事に集中するジュノーだ。

 今までジュノーにこの想いを直接伝えた事はなく、どちらかと言えば上司と部下のような関係に近いだけに、まず異性としての認識は限りない零にしか思えない。それはフレイの青臭い恋慕に対して、ジュノーが成熟の可能性が皆無である事を毅然とした態度で示すからだろう。

 そんな事情の中で盗み見る、少し離れた薄暗い空間にジュノー自身で発光させる淡い彩光。

 美しい蒼で周囲を淡く照らして、息を呑む程の美貌を魅せつける現在のジュノーは、黒塗りとも、黒髪のおかっぱ姿さえ似ても似つかぬ対照的な変化で、その容姿を別人へ誘っていた。

 見目は子供のまま身体の二倍以上に成長した毛髪は、艶ある黒髪とは打って変わって、煌めく銀を混ぜたような白髪に変色させて、毛髪を円形状に均等に伸び広がり配置させている。

 まるで花嫁のヴェールを連想させる、絶品の絹を纏うような美しい白髪が身体を全体を纏う。

 頭頂部には輝く金の簪や華やかな大輪の花飾りで、ジュノーを鮮やかに彩っている。

 碧眼は虹彩を失くし、代わりに現れたのは大海原を連想させるような翠眼に変化を加えて、蒼の濃淡を基調とした最上級の生地に金糸までふんだんに使用した、緻密で優美な裾の長い羽織物を着用する事で、ジュノーの持つ優艶でミステリアスな雰囲気を存分に引き立たせている。

 まさに豪華絢爛、生きる芸術。

 これら全てがジュノーの毛髪によって紡がれた神秘の能力。しかし才幹はこれに収まらず、静寂な大地を網羅する眩い光のように、広大に及ぶ知略の包囲網こそが真骨頂だろう。

 それぞれ配属させた個々の生きた毛髪が本体ジュノーから着脱し、変化自在に細胞の隙間をするりと通り抜け、大地に潜り込み地上に芽吹いた毛髪は、主に六脚類の昆虫に存在を欺き、幅広い変化で人間の生活に溶け込み馴染む。各々が放つ微力な電波によって常に伝達される膨大な情報は、ジュノーが全て目を通す事で問題の根幹を正確に、陰り無くメスを入れている。

 こうも細かく経過を見守りながら解決にも尽力する姿は、フレイ同様、寛大な優しさと底なしの慈悲深さが垣間見れる瞬間だ。全生体の中で最も重要な役割と能力を与えられ、序列最高位に君臨する№01のジュノーと№02のフレイの実力は、偉大さに輪を掛けたような類で、隠れる事も困難な眩い光を放ちながら、安息の地を手探りで探す日々を過ごしている……。

「ねぇ、そんなにジュノーが良いの? 私は二番目?」

 ジュノーとの関係、能力、そして未来。ジュノーに関する様々な問題に悩むフレイの表情ほど分かりやすいものはない。その上こういう時のステラの勘は冴えるのだから困りもの。

「順番なんて関係ないよ。二人共同じくらい大事だよ、とってもね」

 唐突なステラの気持ちに戸惑いつつも正直なフレイの反応に、ステラの独占力は煽られる。

 あからさまな好意を冷静に対処されては、情緒不安定さを顕著に引き出させるのだから。

「フレイ、私、外に出たい。少しぐらい外の空気を吸いたいよ」

 今にも泣きだしそうなステラを見て、感情で測る天秤が圧倒的尺度でどちらに傾いたかなど、想像しなくても答えは一つ。元々ステラの不遇さも相俟って、フレイに迷いは無かった。

 二つ返事で了承してすぐ行動に出ると、この二人から背を向けて一人集中するジュノーの目を掻い潜る事は驚くほど容易で、特に何事も起こる事無く、この場から抜け出す事に成功する。

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