零紅 ーゼロロゼー 現代最終戦

あまなつ

現代最終戦 プロローグ

「回転」

――――……最も単調で最も偉大な生命の要、あるいは最も尊き生命の祖……――――





 生きる意味を示す為に刻むナンバー、生き続ける為に刻む数字、共に生きる為の結合。

 全てを凌駕する魂は罪深くあれ、唯一の希望と成す。

 人間が牛耳る世は羊頭狗肉。秩序の無い未来に何を描けと言うのか。

 お前は卓越した能力を用いて掴む自由に何を迷う。何を怖がる。何故、悲しむ……。


 地球とは程遠い場所で、その身を焦がし続ける孤高の人物は滾らせる熱い眼を固く閉じ、高らかと弧を描く猛火に身を委ね、波のように押し寄せる灼熱に埋もれ消えては、また浮かぶ……――――







――――……星々が輝きを主張する中、高身長に見映える屈強な身体に、頭から足先まで全身を紅に染めた不可解な男が一人、この存在を際立たせている。

 そんな紅い男が右手で掴むのは、人間の頭部であり、既に息絶えた男性の屍が一つ。

 場面は樹木の根のように蔓延る光の歓楽街を一望できる、とある高層ビルの屋上の一角。

 行為は残虐、事態は残忍、状況は深刻。不気味な紅い男は下界の全景が窺える一角まで遺体を手荒く引きずり、野獣さながらの重低音の唸り声を叫んだ瞬間、大きな手で頭部を軽く圧砕。

 遺体の頭部は原型を留めず。しかし損傷はこれに収まらず、契機となった頭部を軸に細胞破壊が連鎖を起こして、全身が脆く朽ち果て細かな粒子へ。形を失くした残骸は、風吹き荒れる夜空に欠片一つ残さず消えて行く。それはこの生物が普通の人間ではない事の確証。

 時刻は深夜零時を過ぎた頃。今日が始まるこの時間、街には多くの人間が行き来する。

 この呆気ない屍の最後に興味を示す様子は無く、ただ静かに下界を眺め、白光する大きく丸い双眸に変化の兆しも無いまま、紅い男は更なる闇へ悠長に消えて行く……。


 それは生ぬるい風と、室外機の五月蝿い音を纏う初夏だった……――――

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