再会
僕には、明るくて可愛くて人気者の幼馴染がいる。
地面には足の踏み場もないほど銀杏が落ちて、隅の方には赤や黄色に染った葉っぱが積み上げられ、風で散っていた。その並木道を振り返ることも無く僕の手を握って走る彼女がどうしようもなく思い出される。
ほぼ毎年、この色の並木道を見ると懐かしい気持ちになる。
昨年の末、唐突にその彼女から連絡が来て、久しぶりに2人で出かけた。2人で連絡を取りながら予定を組んだため非常に楽しい一日を過ごせた。しかし、あの後彼女から連絡はない。僕もわざわざ連絡するほどではないかと思い何も連絡を取れずにいる。
もう半年以上が経った。
なんとなく色付いてきたイチョウを手に持ち、クルクルしながら近くのベンチに腰かける。
ちょうど小学生が群れをなして歩いているのが見える。元気だな。
「あれ?そーちゃん?」
不意に声をかけられて、肩が跳ねる。振り返ると、つい先程まで記憶の中にいた幼馴染がそこにいる。
「久しぶりだね!家が近い割には全然会わなかったね!」
「そうだね、久しぶり」
「こんなところで何してるの?」
「特に何も、ただぼーっとしてた」
「そっかー」
そうやってやり取りしている間に彼女が当然のように僕の横に腰掛ける。僕はベンチの隅の方に追いやられた。
彼女は荷物を僕と彼女の間に置いたから、妙な隙間ができた。
「懐かしいね〜、昔は2人でこの辺で沢山遊んだよね」
「ちょうど、そう思っていたんだ」
「え?」
どういうこと、と彼女から追撃が入るが、君のことを思い出していたなんて言える訳もない。僕は話題をそらすことにした。
「今日はなんでここに?」
「今日はたまたま、三限が範囲より進みが早いからって打ち切りになって、早く帰ってこれたの!君は?」
「僕は午前だけだからお昼を食べて帰ってきたところ。」
「そうなんだ!いいね、午前だけなんて」
「まあね」
「私は今期は忙しくてもうてんてこ舞いだよ」
「そんなに忙しいの?」
「うん、授業も多いしこのあとバイトだし……」
ーーーー
そうしてくだらない雑談を、主に彼女が話しているのを聞いているだけだったが、久しぶりに2人でのんびり会話を交した。
「もうこんな時間!?急いで帰らなきゃ」
「ほんとだね、帰ろうか」
不意に時計を見た彼女が慌て始めるので、僕も荷物を持って帰る支度をすませる。
「送るよ」
2人で横に並んで他愛のない雑談を続ける。
少しだけ僕の前を軽い足取りで歩く彼女の横顔が楽しそうで。あの頃からちっとも変わらない彼女を見て、少しだけ、このまま家に着かなければいいのに、なんて考えた。
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