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2日目の研修は主に契約書類の取扱いについてで、営業は自動車保険の販売に関わることから、損保一般試験について説明される時間が多くとられ、全員が合格するように指示もされた。



研修が終わり、成美が会場となっていた広間を出ようとしたところで、ぽんっと肩を叩かれ、振り向くと隼人がいた。



「水野さん、これ落としたよ」



差し出されたのは、ボールペンだった。

成美が自分のクリップボードを見ると、挟んでいたはずのボールペンがなくなっている。



「落としたの全然気づいてなかった。ありがとう」


「役に立てて良かった」



それだけ言うと、すぐに隼人は待たせていたらしい数人の元へ行ってしまった。

そして話をしながら、成美が出ようとしていたのとは別のドアから広間を出て行った。




広間の中にはまだ多くの新入社員たちが残っていて、その全員が黒かネイビーの似たようなスーツを着用し、同じような髪の色に同じような髪型をしている。

髪の長い女子は皆一様に後ろで一つに結んでいて、違いと言えばその長さくらいだった。

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