第48話

下から後ろから突かれながら絶望の言葉を浴びせられる。



それでも何度もエルミーユは首を横に振りインハルトを信じ続けた。



インハルトは必ず双子の思惑に気付き助けに来るはず。きっと今も必死になって探ってくれているはず。



大丈夫、必ず────



双子は彼女が未だ闇に堕ちていないことに気付いていた。



声はなくとも彼女の瞳に宿る光が意思の強さを示し、それが双子にとって落としがいのある玩具であるかのように簡単には興趣が尽きなかった。



むしろ只インハルトを貶めるつもりが、いつの間にかエルミーユの存在自体がなくてはならないものになっていた。



「インハルトはこんな穢れた敵国の女はもういらないよね。」


「きっと直ぐに綺麗な貴族と結婚して幸せな家庭を築くだろうね。彼は上官たちからの信頼も厚いから。」


「エルミーユはもう暫くしたら海に沈めてあげるからね。」


「ああそれとも兵士相手に身体でも売ってみる?」


「アハハ、売れないでしょこんな身体!」


「ああじゃあちりと化すしかないね。」



闇に染まらないエルミーユに双子の言葉は日に日に悪化していく。



エルミーユがこの屋敷に来てから二月ふたつきが経とうとしていた。



いっそのことこのまま自分たちに泣いて縋ればいいとさえ思うようになっていたアーチとアーサ。



もっともっとエルミーユをボロボロにして、自分たちに依存すれば一生この可哀想なペットを可愛いがってやれると。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る