第44話

「噛んだらあんたとインハルトの関係を上に報告するから。そしたらインハルトがどうなるか、分かるよね?」



応えることすら赦されず、アーチの身勝手な動きにエルミーユは涙を溢れさせた。



食道まで支配されたように喉の奥を突かれ、それに抵抗出来ない自分にも悔し涙が溢れる。



動きを加速させていくアーチ。



逃れようと頭を振るも、今度はこめかみを左右からアーチの手で固定された。



「っ・・・堪らないね、インハルトの大事なもんを玩具にしてるなんて。」



「おいアーチ、まさか"待て"が出来なかったの?なんだかアーチらしくないなあ。」




同じ音色の声。



重なるような和音にエルミーユの脈が波打つ。



エルミーユがアーチ越しに見た先には、アーチと同じ顔をした男が立っていた。



思わず目を自然と見開き、絶望の表情を作る。



「アハハ。見てよアーサ、この女僕たちが2人だと知って驚いてるよ!」



銀髪の長い髪を右で一つに結び、目元にほくろのある矯正監の恰好をした男、アーサが監獄塔から帰って来たのだ。



「ちょっとアーチ邪魔。アーチの揺れる尻見てたら萎えるって。」


「え?アーサもやっちゃうの??それこそアーサらしくないって。」



眉をひそめるアーサがアーチの身体をエルミーユから手で払い退けた。



口から吐くように出され、エルミーユがえづくように唾液の糸を引かせる。



「ああ可哀想なエルミーユ。今楽にしてやるからね。」



アーチがエルミーユの頭上に、アーサがエルミーユの股の間に入った。



「いやッそれだけは嫌ッッ!!!!」



エルミーユが絨毯を掴むように身体を捩るとアーサが舌打ちをし、エルミーユの頬を平手で打った。



バチンッと響くような音を鳴らしアーサが一言「うるさい」と威圧的な顔を向ける。



しかし気丈なエルミーユがそれで屈するはずもなく、震える脚で何度もアーサを蹴ろうとした。



「何こいつ!さすがヴァン·ヘルシングの娘だね!面白い!!」

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