第40話
二本の指の腹で胸を軽く圧され、頬から首へ、首から胸へと汗が流れる。これは触診なのだからと強く気を持とうとするエルミーユだが、それはすぐに裏切られることになる。
アーチの指が胸の突起を潰すように捏ね始めたのだ。
「っ!」
エルミーユはアーチの手を払おうとするもすぐに両胸を下から鷲掴みにされた。
「ちょっ!!」
「駄目だよエルミーユ。これはインハルト様からの命令なんだから。」
「そ、そんなわけっ」
そんな訳がないと言い掛けて、エルミーユは自分の頭が朦朧としていることに気付く。
やはりのぼせてしまったのだろうか。
空気が湯気に呑まれているせいか、酸素がやけに薄い気がする。
振り払おうとしたエルミーユの手はいつの間にかバスタブの縁を掴んでいた。
「・・・お利口だねエルミーユ。暫く大人しくしていてね。」
耳元でアーチが囁くと、エルミーユの耳たぶを甘噛みし舐め取った。
触診では考えられない行為にエルミーユは逃れようとするも何故か上手く身体が動かせない。
エルミーユはバスタブを掴む自分の指先が震えるのが分かり、抑えるようにぎゅっと掴み直す。
白い湯船から上がる湯気を灯りが電球色に染め、浴室全体がオレンジ色の靄に包まれるのを感じた。
ちゃぷと湯船の水面から上に、下にとアーチの手が行き来する。エルミーユの胸を何度も揉みしだき、突然突起を前に引っ張るようにして指で強く摘まんだ。
朦朧としているはずのエルミーユが小さく声を上げ浴室に響かせると、アーチは面白がるようにそれを何度も繰り返すのだった。
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