第38話
「・・・僕の父親は上司に自爆攻撃を強いられて死んでね、」
「え・・・」
「・・・だから僕はハンターを恨んでるんじゃなく戦争そのものを恨んでるんだよ。」
エルミーユはアーチの父親の死に酷く胸が痛んだ。何故なら自爆を強いられる死に方を初めて知ったから。
ハンターもヴァンパイアも所詮は戦に使われる道具。
エルミーユはインハルトと赦されない恋に落ち、何度も産まれた意味を巡らせてきた。しかし最初から産まれる意味など戦のためだと決められているのだ。
「インハルト様は僕の直属の上司なんだ。知っての通り彼は忙しいヴァンパイアだから僕が身体を調べさせてもらうよ。感染病なんかにかかっていたら大変だからね。」
「え、し、調べるって・・・」
「これでも隊の中では医療に精通している方なんだよ。インハルトも信頼のない医者に看て貰うよりも僕が看る方が安心なんだろうね。」
「・・・で、でも」
「さあ、それ脱いでバスルームに入って?」
そう当たり前のように言うアーチはエルミーユに優しい笑顔を向けている。
エルミーユは壁際から一歩ずつアーチの方に寄り、顔を熱くしながらもワンピースを肩から外した。
白く長いワンピースが床のタイルに落ち、続けて下着を脱いでいく。
医療に精通しているとはいえ目の前で自分を見つめているのはヴァンパイアの男。
エルミーユは胸と股を腕で隠すようにしてバスルームへと足を伸ばすが、アーチの表情は何一つ変わらなかった。
それが彼女の気を弛ませてしまった要因でもあった。
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