第35話
──────・・・
ずっと鎖に吊られていたせいか腕が思うように動かずふと肩の痛みに顔をしかめる女。
眩しさにその双眸が上手く開かず、思わず指で瞼を抑える。が、自分の手が自由になっていることに気付くと勢いよく飛び起きた。
手首と足首につけられていた枷がなくなり、そのまま白い肌に食い込むような痕が残されている。
只違うのは、立っているのではなく自分が横たわっているということ。
手足は鎖に繋がれていないということ。
自分が着ていたスーツが、白く長いワンピースに変わっているということ。
そして暗く空気の薄い地下廊ではなく、広く綺麗な赤い絨毯の敷き詰められた明るい部屋にいるということ。
突然の信じられない光景に女の目が見開き思考を巡らせていく。
その頭にふと
もしかして、彼が私をここまで連れ出してくれたのだろうか・・・。
ベッドから裸足の足を下ろし絨毯につけると温かさが身体にじんわりと伝わる。
夢なのではないかと思いながらも自分の肌に感じる温度に現実であればいいのにと期待に胸を高鳴らせていく。
両扉の前まで来ると、ひんやりとしたドアノブにそっと触れてみる。
しかし女が握るよりも早くドアノブが回され、女がすぐにドアノブから手をひいた。
「やあ、もうお目覚めですか。」
「?!」
そこに立っていたのは黒髪の男ではなく、髪の長い銀髪の男。口元にはほくろがある。
監獄で見たことのあるその顔は、黒髪の男と共にしていた柔和な表情。
「あ、貴方は・・・」
「初めまして、エルミーユ·ヴァン·ヘルシング。」
「・・・・・・」
「僕の名前はアーチ。これでも隊の軍曹やってるんだよ。」
少なくとも監獄で一度は顔を合わせているはずの彼が"初めまして"ということにどう応えてよいか分からない女。
しかし黒髪の男の仲間であって欲しいという希望があったため敵意を出さず、アーチと名乗る男同様、落ち着きを払い話し掛けた。
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