第4話
「よし、お前ら死体を片付けろ」
男が隊の兵士たちに指示を出す。
すると 小さな声がコンクリートに木霊した。
『 殺してない 』
声の主は吊るされた女だった。
「・・・・しゃべれんのかお前。」
兵士たちが恐る恐るその空間に入ると怯えながらも倒れているヴァンパイアをそそくさと運び始める。
赤髪の男が全員運び出されたのを確認すると兵士に向かって言った。
「ここからは嫌でも俺の管轄だ。
全員上に行ってろ。」
「はっ !」
兵士たちが声を揃え返事をするとその重く分厚い扉が轟音を鳴らしながら閉じられていく。
水滴すら進入出来ないその空間に、赤髪の男と吊るされた女が取り残された。
赤髪の男がつばを持ち帽子を取ると、その左頬にはナイフでつけられたような傷があった。
女は目隠しをされているが帽子を取る音に少し顔を上げ反応を示す。
「俺の声が誰か分かるか。」
「・・・・・」
「・・・また
男は女の足枷が外れているのを確認するとそのまま女の方へと近寄った。
女の顔面を目の前に再び男が口を開く。
「俺の頬につけた傷、覚えてるか?」
「・・・・・」
「俺らが境界線に乗り込んで行った時、お前の剣につけられた傷だ。」
「・・・・・」
「そんな強ぇ女がわざわざ捕まりにくるとは・・・・一体何を企んでる?」
「・・・・・」
「こういう時に俺らがするのを何て言うか知ってるよな?」
「・・・・・」
男は一つ溜め息をつくと女の耳元で囁いた。
「"拷問"だよ。」
「・・・・・」
しかし女は微動だにしない。
表情は見えないが手首を吊るされるその姿は怯えでも諦めでもない様子で堂々と立ちはだかっていた。
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