第3話

真っ黒な髪に真っ黒なボンテージ調の全身スーツ。



髪は細かくうねり、その豊満な形がはっきりと分かる身体に密着したスーツ。



風も通らない最下層の地下牢で目隠しをされ両手首を天井から吊るされる女が一人。



しかし床から繋がる鎖の足枷は何故か両足首ともに外れていた。



その足元から冷えたコンクリートの床を辿ると、細々とした血の川が流れている。



更にその川に沿っていけば床に転げる5体のヴァンパイアが寝そべっていた。



重い鉄の扉の外からは口々にかしこまった言葉を放ち整列させられた部隊。



両脇に綺麗に並べられた隊の間を少し毛だるそうに歩いてくる赤髪の男が姿を現した。




「こんな時間に起こすなよ。」



「はっ!申し訳ありませんっ!」



髭の男の看守が敬礼をした。



「しかしながらここからは我々の管轄外でして!」



「わあってるって。」



赤髪の男の腰には二本のサーベルが下げられている。





嫌々被ったであろう帽子のつばを深く下げるとその扉に付けられた重たいハンドルを回した。



この重いハンドルを回せる力を持つのはヴァンパイアの中でも限られた者だけ。



ギギィッ



分厚い鉄の扉から暗いコンクリートの床にゆっくり目を這わせていく。



「・・・・やってくれたなNo.824。」



赤髪の男が言葉とは裏腹にニヤリと笑みを浮かべた。

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