第167話
「・・・おい、
お前今、織果を狙ったな。」
凌久のハスキーボイスが一気に重低音へと変わる。
背中を向けているにも関わらず、私の鼓動を振動させた。
「うん、狙ったよ。」
「お前織果に惚れてたんじゃねえのか!」
「うん、惚れてるよ。」
今、私を狙ったハン君が私にデスマッチだの喧嘩を売りたいと言ったのはどうやら本当だったらしい。
じゃあ、その"惚れた"っていう言葉と行動が一致しないのは何故?
「もうずっとずっと、ずっと前から好きだよ。」
「ずっと前って・・・日本に来たのはそんな前じゃねえだろ・・・。」
ハン君がうちの大学に来たのは、約半年前。
私が久々に大学に行った日、周りの女子たちの視線を独り占めにしていたハン君が、地味な私に話し掛けて来てくれたのが出会いだ。
『・・・凄くいい匂いがする。"すうこう"な香り・・・。』
いつのまにか私の後ろに来ていたハン君が、私の耳元に顔を近付けて言った。
まだ骨盤骨折のリハビリを終えたばかりで、人に恐怖心があった私は身体を硬直させた。
『君は、甘い血の持ち主?』
その言葉で振り返ると、そこには甘く柔らかい笑顔があって、私の血の匂いを感じ取ったハン君に親近感を覚えた。
私の周りにはいつもヴァンパイアがいる。
私を受け入れてくれる優しいヴァンパイアたちが。
それからハン君は何かと私を見つけて自分で漬けたという漬物を食べさせてくれて、
一生懸命話し掛けてくれる彼に私は心を開いていった。
イケメンなのに天然で、ちょっとぼーっとしているのんびり屋のハン・シアンに。
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