第166話

「・・・"好き"とかそんなんじゃない。てか何でお前がここに」


「"そんなん"じゃない??じゃあ、なに?

なんで、一緒にいるの・・・?」


「・・・もっとずっと深いもんだよ。」


「・・・へえ?」



アプリコット色の髪が後ろの木々に映えて綺麗だな、なんて思ったのに、


切なげな目をするハン君の心の内が


見えない。



「ジャマなのは、あの高校生たちだけだと思っていたのに・・・。本当の敵は、"灯台もと暗し"??って日本では言うんだっけ?」


「お前・・・やたら上手いよな、日本語。」


「まあ、

韓国にいる時から、ずっとずっと、勉強してきたから。」



ハン君が足元にある石ころを拾って、もう一度元の姿勢に直ると


私の前に立つ凌久が一瞬動いたように見えて


刹那に隣のブランコが揺れた。



キコキコと鎖がひしゃげた音が鳴る中、凌久が自身の頬を掌で触る。


頬から離した掌には、赤い粘度がありそうな血液がべっとりとついていた。



「っっ?!!」



薄く擦れて切れたような血の出方じゃない。


・・・深い。


多分、ハン君が拾った石を投げたのだろう。


でも、全く見えなかった!

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