第165話

「じゃあもし、俺がお前だけを守るって言ったら?」


「・・・」


「俺は織果だけのもんで、織果は俺だけのもんだって言ったら?」



何だそれ。


そうやって言ってることが既に漬け込んでたりするんだよ凌久。


でも触れた指がどんなに温かくても、もう私の気持ちが凌久に傾くことはない。



「・・・無理だよ・・・凌久は私だけを守れない。私も、凌久を好きにはならない・・・。」



「・・・超頑固。」


「超頑固だもん・・・。」



何を言われても、里桜を好きだと気付いてしまった時点で無理なんだ。



私は、皆が合コンに行ってるのをいちいち隠してることが嫌だったわけじゃない。


そんなの只の建前で


本当は里桜が知らないどこかの女と仲良さそうにしてるのが嫌なだけ。


自分で今更になって気付くなんて・・・・



何度も流れて来てしまう涙に、上を向くべきか下を向くべきか分からず


私の頬を撫でてひたすら涙をぬぐってくれる凌久。



そろそろ帰らないと、うちに来た宗平たちが心配しているかもしれない。



頑張って涙を止めようと腕で顔をこすると、


凌久の後ろから砂利を踏み締める音が聞こえた。


凌久の目元がピクリと動く。



「・・・そっか・・・つまり凌久は、


伊東さんのことが、好きだったんだ・・・」



既にハン君の気配を感じ取っていた凌久が立ち上がると、ハン君の方を振り返った。

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