第151話

それから電車に乗って席に座ると、私は窓から外を眺め目を輝かせた。


次々と景色が動いていく。


視線をスライドさせていくと、窓ガラスには凌久の綺麗な横顔が写っていて、少し見とれてしまう自分がいた。


そんな私に凌久が「何?」とまた余裕そうに唇を小さく動かした。




駅に着くと凌久が私の手を引いて言った。



「電車ん中楽しかった?お前顔がずっと笑ってた。」


「・・・うん。」


「たまにはいいな、こういうのも。」



"たまには"?


視線を、繋いでいる大きな手から凌久の顔の方へと這わせた。



「・・・凌久・・・、もしかして、車持ってる?」


「・・・まあいい大人だからな。そら持ってるよ。」


「・・・もしかして、私を電車に乗せるために今日車で来なかったんでしゅか?」


「・・・・・」



私が見つめる凌久の顔はひたすら進行方向を向くばかりで


全然こっちを見ようとしない。


ちょっと凌久が足早になり、私は思わずコンクリートでつまずきそうになった。


でもヴァンパイアの反射神経と凌久の優しさのおかげで私は咄嗟に持ち上げられた。



「・・・ありがと・・・」


「・・・・・」



やっぱり無言。


顔を合わせるようにして抱っこされ、私は凌久の首に手を回して掴まった。


触れた首元がやたら熱を持っている気がする。



これってもしかして、照れてたりする??

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る