第149話

・・・凌久にそこまでして貰える義理はないはずだ。


護衛なんだから払うのは私のはず。


何でそこまでして私を気に掛けて色々やってくれるのか分からない。



瞳子さんのラインには"志藤"という名前が書かれていて、実際来たのは"須藤凌久"。


只の打ち間違いかもしれないが一度瞳子さんに電話をして確認すべきなんじゃないだろうか。



私はショルダーバッグを開き、スマホを取り出す。



でも玄関から凌久が声を掛けて来た。



「ほら、早く行くぞ。どうせ夕方にはお前の仲間が来るんだろ?それまでに帰った方がいい。」


「・・・うん。」


「お前のが遅いと心配するだろ。」



・・・ちゃんと私の仲間のことも気に掛けてくれる凌久は只優しいだけなのかもしれない。


でも暴行事件の犯人はヴァンパイアだって言ってたし・・・。


不安を拭えないまま私はスマホをバッグに閉まうと玄関へと急いだ。



宗平に買って貰った靴を履くと、凌久が私と目線を合わせるようにしゃがみ込む。



「心配すんな。本当に瞳子とは腐れ縁だ。」



凌久が後ろポケットから長財布を取ると、中から一枚の写真を出した。


写真には何人かの子供たちと数人の大人、そして若い頃の瞳子さんが写っている。


そして凌久に言われるよりも先に私は凌久の姿を見つけた。


学ランを着た銀髪の男がポケットに手を突っ込み立っている。


昔から態度がでかく自信ありげな様子がうかがえる。



瞳子あいつ午前中は会議だっつってたから昼に一度連絡を入れる。」



不安そうにしていたのが顔に出ていたのか凌久が直ぐに私を安心させてくれた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る