第134話



多分2人きりになるのはそれ以来だと思う。



今日は変な時間にお昼寝をしてしまったから全然目が冴えている。


とりあえず居間に座り込むと、四竃がついていたテレビの電源を消した。


もう「よいこは寝なさい」とでも言うつもりか。


でも四竃が私の隣に座ると私を見て言った。



「・・・さて・・・ルカちゃん、ちょっと話をしようか。」



四竃が改まったように私を四竃の方へと向かせる。



・・・四竃は鋭い。


極道の息子として生きてきたから当然だ。


彼の父親でもある組長は多くの人間に慕われ、多くの人間に裏切られてきた。


それを間近で幾度となくの当たりにしてきたのだろうと、今この瞬間によって痛感させられることになる。



「・・・ルカちゃんさ、二越サンに言われるまで暴行事件のこと知らなかったんすよね?」


「・・・うん?」


「でもこの服って、今日瞳子サンが持って来てくれたんでしょ?」


「・・・うん・・・。」


「瞳子サンのが先に来てるならさ、暴行事件のこと瞳子サンから聞いてるはずじゃない?」


「・・・・・・」



警察官であり私の叔母である瞳子サンが、私に会って暴行事件のことを真っ先に私に言わないわけがない・・・。



「・・・それに一氏さんとも何かあったんでしょ?」


「え・・・」


「律儀な一氏さんが用事の中身も言わずに突然帰るわけないって。」


「・・・・・・」



四竃は俯く私を無理にどうこうする訳でもなく、沈黙を貫こうとする私の前で只じっと待っている。


自分の心臓が小刻みに動き出して、私の小さな胸板が前後に動き始めた。

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