第115話

肩紐を両手で持ち水着を私に広げて見せるその姿は、まるで娘とお風呂に入りたがるパパのようだ。


期待の眼差しを向けられ、変な汗が毛穴から吹き出る。


でも昨日お風呂に入ってないし、髪の毛洗ってもらいたいし、あと嘘をついてしまった手前なんとなく断りにくい。


オロオロする私にさらに追い討ちを掛けるように、宗平が私の顔を下から覗き込んで来た。



「あーあー、さっき食べた有名店のキッシュ、手に入れるの大変だったんだよなあ。。」


「っ・・・・・」


「一緒に入りたいなあ。」



・・・・



実は昔、二越所有のプライベートビーチに行こうと誘われたことがある。


肌を晒すのが苦手な私に、太ももまで隠れる色気ゼロのスクール水着を用意しておくからと鼻先で笑われ、


当然私は誘いをお断りをしたという、どうでもいい過去を今思い出した。


宗平はそのことを根に持ってるいのかもしれない・・・。



「・・・でも、うちのお風呂、激狭でしゅよ・・・宗平には合わないかも・・・。」


「狭いのは重々承知だ!」



セレブが何言ってんだか・・・


そんな二越財閥お坊っちゃまの心意気と気迫に負けた私は、マジで一緒にお風呂に入ることになった。


小さくなりすぎて私も頭がおかしくなったらしい。



四竃が小声で「笑えないわー」とあきれ顔を見せた。

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