第101話

でも私は総長だから。


気高さを失わないよう、ただただ腹の底から笑ってやった。




レイプされる寸前、ようやく助けに来てくれた4人によって間一髪を免れ、


里桜は狂ったように暴れ回り、


宗平は相手の女を殴っていた。


三潴はすぐにシャツを私に着せてくれ、


その後四竃が呼んでくれた警察によって彼らは捕らえられた。




全身打撲、火傷、肋骨骨折は無論のこと、


一番まずかったのは骨盤骨折だ。



そのお陰で一年経った今でも生理は来ない。


代わりに違う出血が度々ある。




彼らは無惨な姿にされた私を最初どう扱っていいか分からなかったようで、


しばらくは腫れ物に触るような扱いだった。


"腫れ物に触るような"というのは、

余所余所よそよそしいという意味で。




そんな風に扱われるのは嫌だ。


せっかく出来た私の居場所なのに、たかが集団リンチ一つで皆が離れて行くのは辛すぎる。



ちょっとぐらい周りに嫉妬されるのは仕方の無いこと。



私は総長だから、人質にされた生徒のためならなんてことはない。



全然大丈夫だから、そんな風に扱うのは止めて欲しいと笑顔で皆に伝えた。



でもその顔を見て、皆の顔が強張こわばった。



何故なら私は普段無表情だから。



笑わない


怒らない


哀しまない



表情はほとんど出したことがない。


瞳子さんの話では、私を引き取った時にはすでに無表情だったらしい。



恐らく、彼らに見せた初めての表情が


その取り繕った笑顔だった。




警察で事情徴収を受け、カウンセラーの人と話をし、皆が帰った後、


ようやく静かになった病室で私は


一人泣き続けた。



泣いて泣いて泣いて、



自分が女であることを恨んだ。




「狂喜の血」を持つ私が、せめて男に産まれていたら疎まれることも無かっただろうに。

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